韓国文化シリーズ第4回の今日は、'宗廟'にまつわるお話をお送りしていきたいと思います。
朝鮮王朝は韓国の最後の王朝です、朝鮮時代末期には、世界からの圧力により、国を立て直すことができず、大韓帝国と国名を変えたり、その後、日本による植民地支配を受けるなどしました。そのため、韓国では、朝鮮王朝に対して、否定的なイメージが少なからずあるのが現状です。確かに、終わりはあまりよい形ではなかったかもしれません。けれど、朝鮮王朝は1392年から1910年まで、なんと518年間も続いた長寿国家だという点は評価されるに値するのではないでしょうか。世界に目を向けても、ひとつの王朝が、これほど長く続いた例は多くはありません。朝鮮王朝は、私たちの想像以上に強固で安定的な国だったということがうかがい知れますよね。毎年5月の第一日曜日、ソウルの鐘路にある宗廟では、朝鮮王朝の歴代の王を讃える宗廟祭礼がとり行われます。
一曲目にお送りしたバイナルログ演奏のLand of morning calmは、昔、西洋人が朝鮮を指す言葉として使われていたものなんです。朝鮮を意味する漢字の朝という字に、鮮やかの鮮という字を翻訳したものが Land of morning calmだということなんですね。
さて、宗廟はソウルの中心部に位置しています。宗廟の中には、いくつかの建物があるのですが、最も重要なのは、歴代の王と王妃の位牌が祀られている霊廟です。王朝の歴史が長かったため、王の位牌を祀るたびに霊廟を増築し、現在では109メートルにお及ぶ長さとなりました。これは木造建築物としては、東洋最長だといわれているんですよ。宗廟は、その整えられた趣ある外観と、歴史的価値から、ユネスコの世界遺産にも登録されています。そして宗廟は、当時の祭礼儀式がそのまま伝承され、現在に至るまで毎年行われているという点で、さらに大きな意味を持っています。宗廟で行われる祭礼儀式と儀式の際に演奏される音楽、そして舞は、世界でも最も古い総合的儀礼文化であるとの評価を受けているんですよ。宗廟で演奏される音楽は、王様の学問の徳を讃えるポテピョンと、軍事上の功績を讃えるチョンデオプという、大きく二つに分かれています。このポテピョンとチョンデオプはそれぞれ11曲からなっており、それぞれの曲には歌と舞がついています。舞は、8人が一列となり、その列を8列作って踊られるため、八という字が入るパイルムと呼ばれています。
朝鮮王朝でも、その初期には、祭礼の際に、中国の音楽を演奏していたといいます。けれど、ハングルの創始者としても有名な世宗大王が、現世では、わが国の音楽を聞いていたのに、あの世に行ってからは中国の音楽を聞かなくてはならないというのは道理に合わないと、韓国独自の音楽制作を発案し、宗廟祭礼楽を作りあげたということです。ですから、今からおよそ570年ほど前のことだということですよね。これほど古い音楽が現在までそのまま伝えられているということは、本当にすばらしいことだと思います。
♬ Land of morning calm
♬ 王様の学問の徳を讃えるポテピョンの中から、ヒムン、キミョン、クィイン
♬ 王様の軍事上の功績を讃えるチョンデオプの中から、ソム、ドッキョン、タクチョン