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絵本「本当の本当の顔を探して」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-11-20

玄海灘に立つ虹


〇今日は久しぶりに本の紹介ですが、絵本です。「本当の本当の顔を探して(진짜 진짜 얼굴을 찾아서)」この絵本、ドラマ「サイコだけど大丈夫」に登場する絵本なんですね。日本でもネットフリックスで配信されて人気を集めているドラマで、ドラマの中で出てくる通り、文 コ・ムニョン、絵 ムン・サンテとなっていて、開くと略歴にもドラマに出てくる通りのコ・ムニョンの作品歴が出てきます。この本だけでなく、ドラマに出てくるコ・ムニョンの絵本5冊が実際に発売されて韓国で話題となり、日本語版も出るみたいです。すごいですね、ドラマの波及効果。


〇見ていない方のためにドラマについて少し説明をすると、精神病院で働く保護士のムン・ガンテ(キム・スヒョン)、ガンテの兄で自閉スペクトラム症のムン・サンテ(オ・ジョンセ)、そして人気童話作家のコ・ムニョン(ソ・イェジ)は、それぞれ過去の出来事により心の傷を抱えた3人。互いにけんかし合いながら、徐々に過去の傷に向き合い、トラウマを克服していくドラマですが、その3人の話がこの絵本になっています。サンテが描いた絵にヒントを得て、ムニョンが童話を作っていくという共同作業がドラマに出てきますが、まさにドラマと絵本のコラボ企画ですね。もちろん、ムニョンもサンテも実在の人物ではないので、実際に絵本を作ったのは、ドラマの脚本を担当したチョ・ヨンさんが文、チャムサンさんが絵を担当したそうです。


〇絵本の中で、それぞれ魔女に顔を奪われてしまった3人は、口だけ笑っている仮面をかぶった少年、これはガンテ、声ばかり大きくて中身は空っぽの空き缶姫、これはムニョン、箱に閉じ込められてもどかしいおじさん、これはサンテに当たります。

ドラマの中ではガンテは母の愛情を十分に感じられないまま母が亡くなってしまい、自分の感情や欲望を抑え込んでしまうキャラクター。ムニョンもまた、両親との葛藤によって他人との付き合い方がよく分からず、サンテは思い通りにいかないことがあれば狭い場所に閉じこもってしまう癖があります。ドラマを見ていると、サイコというのはサンテや精神病院の患者を指しているわけでなく、ガンテやムニョン含め、みんな多かれ少なかれサイコで、「でも大丈夫」というメッセージが込められていました。みんな違って、それでいいんだよ、ということですよね。


〇絵本の中では、奪われた顔を探そうと、3人がキャンピングカーで旅に出ます。その旅で出会う動物や人の悲しみに共感したり、手助けしたり、いい方向に動き出したと思うと、また魔女が登場して邪魔するんですね。魔女が誰か、というのはドラマを見ると分かるんですが、絵本の中では魔女が何を象徴しているのか、が大事だと思うので、それが込められた最後の一文を読みたいと思います。

結局、魔女が奪っていったのは3人の本当の本当の顔ではなく、まさに…幸せになろうとする勇気だったのです。

過去に傷ついた経験はみんな少なからずあると思うけど、そのことから逃げ続けず、しんどいけども自分で向き合って、幸せになろうという努力をしないと、幸せになれない。ということだと思います。程度の差はあってもみんながそれなりに経験することで、だからこそ韓国のみならず多くの国でこのドラマが共感を呼んだんだろうなと思います。


〇絵本の中では3人がそれぞれ仮面や箱や缶が取れて、顔が出てくるんですが、それは勇気を出した結果、でした。コ・ムニョン作家の童話は前の4作は暗かったり、怖い内容が多いんですが、この最後の5冊目が一番明るい。ドラマと共に幸せな余韻の残る話でした。


〇PPL(間接広告)って日本ではあまり見ないですが、韓国のドラマではよく出てきますよね。ドラマの中で商品の広告をするという。「愛の不時着」のチキンなんかが有名ですが。この「サイコだけど大丈夫」はPPLとはまた違うのかもしれないですが、ドラマの中で絵本を作って、その絵本を本当に出版する、おもしろいなと思いました。SNSにアップしたら、ほしい!という日本の方々の反応ありましたが、日本語版も出る、あるいは出たみたいなのでチェックしてみてください。

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