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第593話 フュージョン国楽の世界へ!

#アジュンマの井戸端会議 l 2021-02-09

玄海灘に立つ虹

ⓒ KBS

韓国の伝統音楽の「国楽」。

去年世界でも広く知られた国楽は、何と言っても、イナルチの『虎が下りてくる』ではないでしょうか。イナルチは、ベース、ドラム、ボーカルの7人からなるオルタナティブポップバンドで、アンビギュアスダンスカンパニーとのコラボで撮影された韓国観光公社の広報ビデオで一躍有名になりました。ソウル、全州、釜山のビデオの再生回数が合わせて3億回を突破しています。


イナルチの音楽は、伝統歌劇(唱劇)のパンソリを西洋の楽器のベースギターとドラムの奏でるリズムに乗せたもので、フュージョンとはいえ聴きなれた感があります。他にも伝統楽器で演奏したロックのような国楽を聴かせるバンドや、ジャズとポップミュージックを国楽と融合させているバンド、他の分野の大衆芸術人と活発にコラボを行うパンソリの歌い手もいて、単にフュージョン国楽という一言では済まされないほど多様な活動が行われています。


モダンな国楽を追求する動き、そのための努力は、植民地時代にさかのぼります。近代化の波のなか、西洋音楽のメロディや楽譜をもとに国楽の新しい作品をつくろうという、いわゆる「新国楽」という流れができ、このムーブメントは1960年代から本格的になります。「伝統にとどまらず独創的な国楽をつくろうとしたこのときの精神が受け継がれ、今の国楽がつくられた」と音楽評論家のパク・ソンソさんは話します。そして1985年には、MBC青少年音楽祭に20代の国楽人5人が「スルキドゥン」という名で出場し、伝統楽器とギターやシンセサイザーなどの西洋の楽器が一緒に使われた、当時としては型破りな公演を行いました。ラジオで生中継されたこの公演のあと、MBCに手紙と電話が殺到したそうです。その後もスルキドゥンはメンバーを替えながらジャズやロックと融合した国楽を披露してきました。代表曲の「サントッケビ(山の鬼)」は小学校の音楽の教科書に載っています。


1990年代に入り、韓国の音楽シーンはダンス音楽が主流になっていましたが、その傍ら、国楽はインディーズといわれるジャンルに果敢に飛び込んでいきます。スルキドゥンの若きメンバーたちをはじめ、国楽の即興演奏を得意とするグループやインディーズバンドのメッカで有名なホンデ(弘益大学前)で注目を浴びた「アマドイジャラムバンド」のリーダーでパンソリ専攻のイ・ジャラムや伝統弦楽器のカヤグムでフォークを聴かせるチョン・ミナがその流れを受け継いでいます。


こうした流れを受け継いだバンドとしてはSsingSsing(シンシン)が代表的です。韓服を着ず、男性メンバーが女装をしたり、真っ赤なヘアのかつらを被って独特なパフォーマンスを披露したこのバンド、2017年、アメリカNPR(公共のラジオネットワーク)の歌謡番組に出演した時の映像の再生回数が619万回に達しています。SsingSsing以降登場した国楽グループのほとんどは、ダンスや衣装などビジュアル的な要素も兼ね備えているのが特徴です。イナルチもその流れを汲んでいます。


こうした新しい国楽に、伝統的な国楽になじみの薄い韓国の10代、20代が熱い支持を送るようになりました。彼らは伝統的な国楽に対する先入観がないせいか、音楽の一つのジャンルとして素直に受け入れているようです。「イナルチの音楽は国楽というより、普通に良いポップミュージックだ」という反応が少なくないそうです。レトロがトレンドになっていることもあり、国楽をヒップな(最先端の)音楽だと受け止めているようです。

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