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映画「モガディシュ」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2021-09-03

玄海灘に立つ虹


今日ご紹介する映画は、リュ・スンワン監督の「モガディシュ」です。7月28日に公開されたんですが、公開17日目に観客数200万人を超えて、まだまだ伸びると思います。韓国映画の大作はほとんどコロナ禍で公開を延期しているんですが、果敢に公開して、久々のヒットとなっています。ソマリアの首都モガディシュが舞台となっていて、ソマリア内戦から韓国大使館と北朝鮮大使館の職員とその家族が力を合わせて一緒に脱出する、という話ですが、1991年に実際にあった出来事がモチーフになっています。


リュ・スンワン監督といえば、アクションで知られる監督ですが、今回もすごい緊張感で、見た後ぐったりでした。特に銃撃戦をくぐりぬけて走るカーチェイスのシーンは圧巻でした。

びっくりしたのは、ソマリア内戦の再現。あんなにリアルに再現できるのが本当に不思議なんですが、実際はソマリアではなくモロッコで撮影したそうです。ソマリア内戦は今も続いているんすね。撮影は4ヶ月にわたったそうです。


韓国大使館と北朝鮮大使館が協力して脱出したと言いましたが、普段は敵対関係です。映画の冒頭で、キム・ユンソク演じる韓国大使の乗った車が襲撃されるんですが、そのせいでソマリア大統領との面会に遅刻します。なんとか走って約束の場所に行くんですが、大統領は次の約束のために移動した、と言われます。そこで余裕しゃくしゃくで登場するのがホ・ジュノ演じる北朝鮮大使です。北朝鮮大使館が、韓国大使とソマリア大統領の面会を妨害した、というのが分かります。

この時期は韓国も北朝鮮も国連に加盟する前で、それぞれアフリカ各国の票を稼ぐためにロビー活動をしていたんですね。どちらも朝鮮半島唯一の合法的な政府を主張し、競い合っていました。結局、このソマリア脱出事件の後に韓国と北朝鮮は同時に国連に加盟します。


韓国大使と北朝鮮大使はそれぞれ穏健派なんですが、その部下の参事官同士が血の気が多くてけんかっぱやい。いつも互いに掴みかかろうとして大使がなだめる感じです。韓国の参事官をチョ・インソン、北朝鮮の参事官をク・ギョファンが演じました。チョ・インソン演じる参事官は、韓国の情報機関KCIAから派遣された要員で、体をはったアクションシーンもあったんですが、それよりもコングリッシュと呼ばれる韓国式英語で堂々としゃべる姿がチャーミングで、映画の緊張感を緩めてくれる存在でもありました。


国連加盟をめぐって対立していた韓国大使館と北朝鮮大使館なんですが、内戦が激しくなってきて、北朝鮮大使館が襲撃されます。行き場を失った職員や家族は韓国大使館を訪ねてきます。韓国に命乞いをするのは最終手段です。韓国側にしたら、さんざん嫌がらせをされてきたのに、何を今更と言いたいけども、見殺しにはできない。迷った挙句、受け入れることにします。

とはいえ、敵同士なので、互いに疑心暗鬼です。最初に一緒に食事をする時、北朝鮮の人たちはなかなか食べようとしない。毒が入ってるかもしれないと思っているんですね。さらに、チョ・インソン演じる参事官は、あわよくば全員を韓国に亡命させて、手柄にしようと画策します。それがク・ギョファン演じる北朝鮮の参事官にばれて、取っ組み合いのけんかになります。


こんな風にぎくしゃくした共同生活が始まるんですが、だんだん「生きて脱出」という一つの目標に向かって、団結していきます。

南北をテーマにした映画はたくさんあって、ヒット作も多いですが、最後に別れが待っているというのが共通です。同じ民族なのに一緒にいることは許されない。映画の公開をきっかけに実話にも注目が集まって、当時の韓国大使のインタビューも報じられています。キム・ユンソクが演じた大使のモデルとなった人物ですが、映画とは少し違って、国連加盟をめぐる争いも何も、とにかく一緒に無事脱出しないとという一心だったようです。南北の往来ができるなら当時の北朝鮮大使に会いたいと話していて、その後の消息でも分かればいいのになと思いました。

「モガディシュ」は韓国内だけでなく、海外でも注目を浴びていて、日本を含む50ヶ国余りに売れているということなので、日本でも公開されると思います。公開されたら、ぜひ劇場で楽しんでほしい映画です。

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