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第665話 韓国歌謡界で盗作疑惑が相次いでいる問題について

#アジュンマの井戸端会議 l 2022-07-26

玄海灘に立つ虹


韓国歌謡界で盗作疑惑が相次いでいます。

SNSなどネットを通じて多数の曲について盗作ではないかとの疑惑が提起され、それを当事者の歌手や作曲者が否認し、人々の反感を買う、という世論の循環が起きています。しかしそのほとんどは、はっきりとした結論が出ないままになっています。


最近起きた盗作疑惑は、歌手兼作曲家のユ・ヒヨルが2021年9月にリリースしたピアノ曲「とても私的な夜」についてのものでした。坂本龍一の2013年の楽曲「Aqua」と類似しているという指摘を受けたのです。ユ・ヒヨルは盗作を認め謝罪し、13年間パーソナリティーを務めた音楽番組『ユ・ヒヨルのスケッチブック』(KBS)から降板することを発表しました。同時にこの番組は600回を最後に7月22日に最終回を迎えました。


ユ・ヒヨルは坂本龍一さん側に連絡を取り、「盗作ではない」というコメントを得ました。盗作の問題は是非を判断する定量的な基準がないため、盗作されたとされる側(原作者)の意思や判断が何より重要になってくるからです。一部では、「2小節が同じなら盗作」という基準が示されています。実際、1999年まで、公演倫理委員会では、委員会内部に盗作審議委員会を設け、「2小節以上が同じパターンであったり、類似している場合、盗作に該当する」という基準のもとで審査が行われていました。しかし1999年、公演法の改正で、公演倫理委員会がなくなり、盗作かどうかを審議する仕組みもなくなってしまっています。当時の基準については、「2小節が同じでなかったらいいのか」という意見もあり、あいまいなのも事実です。現在では、盗作かどうかを判断するには訴訟だけが唯一の手段となっています。盗作された側の作曲家が直接裁判所に民事訴訟を起こし、法的な判断を仰ぐのです。


坂本龍一さんの側はユ・ヒヨルに対して法的な措置は取らないという立場を示すメッセージを発表し、この問題はひとまず解決するものとみられていました。しかしユ・ヒヨルの他の曲について次々と盗作疑惑が持ち上がったことで、ますます波紋が広まりました。

それらの曲に対するユ・ヒヨルの立場は結局、「盗作ではなかった」でした。それ以降、イ・ジョク、イ・ムジンの曲にも盗作疑惑が持ち上がりましたが、二人はそれぞれ、「対応する価値がない」、「非常に遺憾」だとして、疑惑を否認しています。


いまは以前に比べてメディアや音楽を接するルートが多様になり、オンラインを通じて共有できる環境も整備されているため、盗作という行為に対して、一般の人たちもより敏感に反応するようになっています。まして特定のアーティストや音楽のファンたちはもっと敏感で、ある程度類似した流れが曲の中にあると判断した場合、直ちに盗作疑惑を提起するようになっています。もちろん、「似たような曲に聞こえる」だけで盗作疑惑を主張してはいけないという意見もありますが、大衆の反応を「敏感すぎる」などとの理由で一蹴してはいけないという見方もあります。


類似性をただちに盗作と判断してはいけないという主張には、1990年代を含めこれまで歌謡界では、特定の曲をレファレンス(参考)曲として新しい曲を作ることが多いこと、それにすべての音楽は既存の創作物の影響を受けているという前提が背景にあります。しかし盗作疑惑が相次いで提起されている現在の世論は、こうした主張に十分な説得力がないことを示しています。盗作かどうかを判断する基準がないため、じかに耳に聞こえてくる類似性を根拠にせざるを得ないのです。どう聞いても似たような曲に聞こえるのに作曲家や歌手はそれを認めない、となると反感を買わざるをえなくなります。


業界の関係者は、「自分の音楽に埋没しているのでない限り、クリエーターは必然的にほかのクリエーターの影響を受けるようになっている」として「レファレンスを通じた発展を否定することはできない」と話しています。ただ、「程度の違いが問題になる」として、「何曲も盗作疑惑の対象になるようなら、自分の創作活動を顧みる必要はある」とした上で、「レファレンスの基準を決めるのは、「その部分だけ似ていないならいい」という考え方につながりかねないので、必ずしも良い方法とは言えない」として、「結局各自の良心に任せるしかない」と強調しました。

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