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視覚障害者の大学総長

#マル秘社会面 l 2019-06-05

玄海灘に立つ虹

© YONHAP News

先月30日、ソウルにあるクリスチャン系の大学、チョンシン(総神大学)の第7代総長にイ・ジェソ教授が任命されました。イ教授は韓国初の全盲の大学総長です。イ教授の半生が話題になっています。

詩と小説を愛した中学生の少年はある日突然、幼い時にわずらった熱病の後遺症で視力を完全に失ってしまいます。韓国には「体が千両なら目は九百両だ」という言葉があります。視力を失い視覚障害1級の判定を受けたときに一番最初に頭に浮かんだのがこの言葉だったそうです。

そんな彼が再び人生に前向きになった契機となったのが「宗教」と「学問」の力でした。1973年偶然参加した集会で聞いたアメリカ人牧師の話が彼の人生を変えました。

「小さなアリは大きな銅像の上をいくら必死に這いずり回っても銅像の全体像を完全に把握することはできないという話でした。人間の限界を知り神の存在を信じることで絶望だけだった人生にようやく希望が生じました」

その後、ソウル盲学校を卒業後、故郷の全羅南道順天に帰り順天聖経学校で聖書の教理を学び、1977年ソウルの4年生大学、総神大学神学科に入学しました。しかしこれもたやすい道ではありませんでした。

「障がい者だという理由で願書の受付をしてくれませんでした。それで午前10時から午後5時まで立ち通しで願書を受付けてくれるまで待ち続けました。入学後、障害のせいで学業についていけなくなったらいかなる処分も受けるという約束をしてようやく願書を出すことができました」

その後、大学在学中に障がい者のための宣教団体を設立、さらに奨学金をもらい社会福祉学を勉強しにアメリカに留学もします。その頃、教会で出会った女性と結婚します。

「大学からの奨学金と現地の教会の信者からの支援金、妻がクリーニング店や食堂などで働いて得た金で10年間勉強を続けました。アメリカの大学の3年に編入後、修士、博士の学位を得て1994年に帰国しました」

その後、1996年に母校で教授となります。そして20年間の教授生活を終え、今年2月に停年を迎え退職しました。今回、まわりの勧めで総長の公募に応募し10人の応募者の中から理事会の全会一致で総長に選任されました。

「まわりの障がい者の人々が大きな壁を乗り越えたような、そんな代理満足を感じられるように総長としての職務を立派に果たしたい」

とその決意を語っています。そんなイ教授の傍らには常に妻のハン・ジョムスクさんの姿があります。文字通り夫婦二人三脚で人生を切り開いてきました。「田舎の教会で最初に会ったときから信頼できる人だと思いました」という妻のハンさんの言葉が二人の絆の固さを示しているような気がします。

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