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映画「ひかり探して」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2022-01-06

玄海灘に立つ虹


明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。2022年の最初に紹介する映画はパク・チワン監督の「ひかり探して」です。韓国では「내가 죽던 날」というタイトルで2020年に公開され、ちょっと暗いタイトルのように感じられますが、実は内容は希望が感じられるもので、「ひかり探して」という邦題はぴったりだなと思いました。主演はキム・ヘス、「パラサイト」の家政婦役で世界的に知られるようになったイ・ジョンウンさんも重要な役で出ています。日本公開に合わせて、パク・チワン監督にインタビューしたんですが、1981年生まれの女性で、私は同世代というのもあって共感することがとっても多かったです。


どんな内容の映画か、と言えば、キム・ヘス演じる主人公のヒョンスは刑事なんですが、とある島に事件の捜査に向かいます。遺書を残してセジンという女子高校生が消えたんですが、目撃情報などから絶壁から飛び降りたとみられるけども、遺体が見つかっていないという事件で、ヒョンスは自殺として報告書を書くために島を訪れます。だけども調べるうちに疑問点がいろいろ出てきます。イ・ジョンウン演じる島の女性は、セジンについて何かを知っているような妙な雰囲気があります。この女性は名前で呼ばれず、「スンチョンから来た人」と呼ばれています。


キム・ヘスといえば映画「タチャ イカサマ師」や「コインロッカーの女」など個性の強い、どちらかというと豪快なキャラクターが多いんですが、今回はほぼノーメイクで、かなり普通の人に近い役でした。これまでとは違った落ち着いたキャラクターで、こういう一面もあったんだと、とても新鮮に感じました。パク・チワン監督は今回が長編デビュー作だったので、スター俳優のキム・ヘスが出てくれるとはあまり期待せず、意見だけでも聞いてみたいと思ってシナリオを渡したらシナリオを誰よりも深く理解して、やってみたいと言ってくれた、と話していました。


希望が感じられる映画と言いましたが、ヒョンス、セジン、スンチョンから来た人の3人はもともとは何の関係もない女性たちですが、見終わった時にはこの3人の関係に希望を感じ、温かい余韻が残りました。

ネタバレになるので詳しくは言えないですが、スンチョンから来た人がセジンを助け、そのことでヒョンスも救われるんですね。他人が他人の希望になり得るというのがこの映画の魅力だと感じました。韓国映画では主人公の行動の理由が家族ということが非常に多く、それはそれでいいんですが、正直「また家族か…」と思うこともあり、それを監督に言ってみたら、監督も家族を理由にはしたくなかったとおっしゃっていました。実際、自分のことを考えても、家族でない誰かに多大な影響を受けたり、勇気をもらったりして生きていますよね。ヒョンスとセジンは会ったこともない間柄だけども、ヒョンスは事件を調べるうちにセジンにどんどん感情移入していく。それは自分のつらい境遇に重なる部分があったからですが、そういう他人同士が共感したり支え合うことの尊さを描いた作品だったと思います。監督と話していたのは、結婚しない、子どもを産まない人も私たちの世代以降は多くて、何でも家族を基準にするのは合わない時代がきているのでは、ということでした。


「ひかり探して」は1月15日に日本で公開されますが、1月は以前このコーナーで紹介した「声もなく」や「ユンヒへ」も公開され、いずれも女性監督か、女性主演の映画なんですね。久々に日本に来てみたら書店ではフェミニズム関連の本がすごく増えていて、関心の高さを感じました。「ひかり探して」は女性が監督で、主要なキャラクターが3人とも女性の映画ですが、監督は特に性別を意識して作ったわけでなく、たまたまキャラクターに合う性別が女性だったということです。だんだん自然に女性主人公の映画が出てくるようになってきたんですね。今日は新年1本目ということで、希望や勇気をもらえる映画をご紹介しました。

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