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第655話 映画やドラマの「国境」がなくなっている?

#アジュンマの井戸端会議 l 2022-05-17

玄海灘に立つ虹


映画やドラマなど韓国のコンテンツが世界的に注目を集めていることで、韓国の監督や俳優、制作会社が、多様な形でコンテンツの制作に参加するようになっています。最近では国籍があいまいな作品も増えてきています。


たとえば映画『ブローカー(邦題:ベイビー・ブローカー)』は、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン(IU)など豪華キャストで話題となっていますが、メガホンを取ったのは是枝裕和さん、日本の監督です。でも日本映画ではありません。韓国の制作会社、CJ ENMが投資、配給を行っているため、韓国映画になります。是枝監督が韓国で韓国の制作会社と手を組んで映画を演出したのは『ブローカー』が初めてです。『ブローカー』は 〈赤ちゃんポスト〉をきっかけに出会った、赤ちゃんの母親、ベイビー・ブローカーの男たち、そして彼らを現行犯逮捕すべく追いかける刑事が繰り広げる旅路を描いており、第75回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品されています。


また、韓国の映画やドラマの国籍があいまいになっていることについて、映画評論家のチョン・ジウクさんは、「投資や制作環境の世界化と多様化によって、映像産業で国家間の壁が崩れてきており、映画の国籍が持つ意味合いがだんだん薄れてきている」と分析しています。2000年代に入り、韓国映画が、いわゆる世界3大映画祭で相次いで受賞するようになったことで、俳優だけでなく、演出や撮影など制作サイドの海外進出も本格化しています。パク・チャヌク監督はアメリカ映画の『ストーカー』やイギリスドラマの『リトル・ドラマー・ガール(邦題:リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ)』を演出しましたし、ポン・ジュノ監督もネットフリックスで『オクジャ』を演出しています。またチョン・ジョンフン撮影監督はハリウッド映画の『アンチャーテッド』や 『IT(邦題:IT /イット “それ”が見えたら、終わり。)』の撮影を担当しました。


1970年代に旧ソ連を震撼させた連続殺人事件を素材にしたスリラー映画の『スリー:まだ終わっていない』も、朝鮮半島をルーツとする高麗人系のカザフスタン人4世、パク・ルスラン監督が演出し、カザフスタンの俳優たちが現地の言葉で演技していますが、韓国の制作会社が制作した韓国映画です。あと、ネットフリックスなど有料の動画サービス(OTT)が韓国コンテンツに注目するようになったことも、作品の国籍があいまいになっている要因の一つです。例えば『イカゲーム』は韓国で制作されましたが、アメリカのネットフリックスの作品です。映画『ミナリ』は韓国女優のユン・ヨジョンさんがアカデミー賞助演女優賞を受賞するなど韓国の俳優や韓国語も出てきますが、アメリカの制作会社が手掛けたアメリカ映画です。Apple TV+のオリジナル作品『パチンコ』も、イ・ミンホやユン・ヨジョンなど韓国の俳優が出演し、韓国語が多く出てきますが、アメリカドラマです。


韓国の映画産業のレベルが高くなっていること、また韓国の制作サイドのクリエーターたちの実力が世界で通用するようになっていること、世界的なOTTサービスの浮上が、文化芸術の国境をあいまいにするこうした変化をリードしていると言えます。

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