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文化

映画「JSA」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2021-04-30

玄海灘に立つ虹


今日ご紹介する映画はパク・チャヌク監督の「JSA」です。韓国ではまだまだコロナで映画館では大作の公開は難しい状況で、旧作の再公開が続いていますが、「JSA」も最近再公開されている一本です。テレビやパソコンではいつでも見られますが、久々に劇場で見るのもいいですよね。2000年公開作で、私がちょうど韓国へ最初に留学する前に見て、「韓国映画おもしろい!」と思い始めたきっかけの一本ですが、今もマイベストテンに入るほど好きな映画です。


JSAというのは、Joint Security Areaの略で、非武装地帯の中にある南北が共同で管理している地域を指します。南北分断の悲劇を描きつつ、南北の軍人の温かい友情を描いた点で画期的でした。北朝鮮の描かれ方というのはそれまでは「敵」として「悪」だったのが、この映画では人間的に描かれます。このあと2000年代に次々南北のコンビが主演の映画が出てきてヒットを飛ばします。「JSA」では韓国の軍人がイ・ビョンホン、キム・テウ、北朝鮮の軍人がソン・ガンホ、シン・ハギュン、そして中立的な立場で事件の捜査にあたるのがイ・ヨンエというそうそうたるキャストでした。


映画はJSAで起こった銃撃戦について、実際はどういう経緯だったのか、というのが明らかになっていく形で進みます。南北の軍人が親しく付き合っていたというのは絶対に知られてはいけないことなので、当初の陳述書には事実とはまったく違う内容が書かれていたんですね。

実際にはイ・ビョンホン演じるイ・スヒョクが地雷を踏んでしまって身動きが取れなくなっている時に、ソン・ガンホ演じるオ・ギョンピルに助けてもらったのがきっかけで親しくなっていきます。この地雷を踏んで泣きながら命乞いをするイ・ビョンホンがかわいいんですよね(笑)


この映画で板門店を知った人も多いんじゃないかなと思いますが、2018年に南北首脳会談があった時、金正恩委員長が軍事境界線を越えて南側へ入った映像は何度も見たかと思います。映画は本物の板門店での撮影はできないので、ナムヤンジュ総合撮影所で撮ったそうです。

映画の中では板門店で南北の軍人がつばを飛ばしあったりして遊びます。この映画の一番好きなところが、南北の軍人が無邪気に遊んでいる姿でした。南北で対立していると言っても、同じ年頃の同じ言語を使う若者同士、仲良くなってもおかしくないという気がしますよね。

外国人が板門店ツアーに来ている場面もありましたが、私も2回参加したことがあります。一度は日本の大学生の団体と一緒だったんですが、背が高いイケメンの軍人が多くて、イ・ビョンホンみたいにサングラスをかけていて、日本の女子大生たちがキャーキャー言ってました。 


私はこの映画で流れるキム・グァンソクの「二等兵の手紙」を聴いてキム・グァンソクファンになり、ベストアルバムも持っていますが、映画の中でギョンピルが「なんでグァンソクは死んだんだ」というセリフもある通り、実際1996年に若くして亡くなってるんですよね。映画公開はそのわずか4年後だったので、韓国の観客にとってはキム・グァンソクの死も映画の余韻に大きく影響したそうです。


パク・チャヌク監督はこの「JSA」の大ヒットで有名になりましたが、実はその前にも2本の長編映画を撮っていたのが興行的に失敗、3本目も失敗したら監督としては相当厳しいという状況で、観客数580万人を動員し、スター監督となっていきます。ところで、私は「JSA」を見て韓国へ留学し、留学初期に見た映画がパク・チャヌク監督の次作「復讐者に憐れみを」だったんですが、全然違う映画で驚きました。その後「オールド・ボーイ」「親切なクムジャさん」と復讐三部作を作り、パク・チャヌクの世界はむしろこっちのちょっとグロテスクな方で、「JSA」がパク・チャヌクっぽくなかったんだなというのに気付きました。

「JSA」は原作があって、企画が先行でパク・チャヌク監督は演出を担当したという形で、必ずヒットさせるべく「無難に作った」という評もあり、ヒットさせて以降がパク・チャヌク監督本人が作りたかった映画と言えるかもしれませんね。

「JSA」はパク・チャヌク色は薄いけども、何度見てもやっぱり名作は名作だなと思います。

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