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文化

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』シナリオ集

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2023-05-18

玄海灘に立つ虹


〇本日ご紹介する本は、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のシナリオ集です。脚本家ムン・ジウォンさんの執筆したシナリオが昨年ドラマ放映後に発売されていたんですが、日本でも韓国語版ではありますが、売っているみたいです。大ヒットドラマなので、見たという方、多いと思うのですが、私も大好きなドラマで、もう一度セリフを吟味してみようと、シナリオ集を買ってみました。


〇もう一つ、シナリオ集を買った理由があって、私の大学の恩師が『ウ・ヨンウ』を素材に授業をするという連絡を受けたのですが、日本の大学の法学部の授業で、日韓の法律や裁判を比較するというもので、私も改めてシナリオを読みながらじっくり調べてみようというのもありました。ということで、今日はドラマそのものの話よりは、『ウ・ヨンウ』のエピソードをもとにしながら、日韓の法律や裁判の比較の話をしてみたいと思います。


〇まずドラマを見ていないリスナーの方もいらっしゃると思うのでざっくり言うと、主人公のウ・ヨンウ弁護士は自閉スペクトラム症で言動がちょっと変わっているけども、法律を暗記することにかけては天才です。周りと違うからこそ、斬新な発想で裁判の流れを変えるウ・ヨンウ。演じた俳優のパク・ウンビンは先日の百想芸術大賞で見事、大賞を受賞しました。

第1話では、幼い頃のウ・ヨンウがなかなか言葉を話さなかったのに、急にしゃべり出したと思ったら、法律の条文でした。ウ・ヨンウのお父さんも法学部出身で家に法律の本があったんですね。お父さんも知らない間にウ・ヨンウは丸暗記していて、最初に口にしたのは傷害罪の条文でした。傷害罪は日本と韓国で少し違う部分があって、それは「自己または配偶者の直系尊属(父母や祖父母など)」に対して傷害の罪を犯した者はそれ以外よりも刑罰が重くなるという部分です。日本ではけがを負わせた相手が尊属であろうが赤の他人であろうが刑罰は同じですが、韓国では重くなる、というのは韓国はそれだけ尊属を重視する社会と言えると思います。

傷害罪だけでなく殺人罪も同様で、韓国では「自己または配偶者の直系尊属」を殺害した場合の刑罰はより重くなります。殺人に関してはかつて日本もそうだったんですが、平等に反するという理由で削除されました。韓国でも削除すべきだという意見もあるようですが、削除されないのはやはり尊属を尊重すべきだという人が多いということだろうと思います。


〇ドラマの中で、一般市民が裁判に参加する場面が何度か出てきますが、これは韓国では「国民参与裁判」と呼ばれます。韓国では2008年に国民参与裁判が、日本では同じく市民が参加する裁判員裁判が2009年にスタートしましたが、日韓で少し違う制度になっています。韓国では裁判に参加する一般市民を「陪審員」と言い、日本では「裁判員」と言うんですが、いずれも刑事裁判で被告人が有罪か無罪か、有罪の場合、刑の内容を考える役割を果たします。ただ、韓国の場合、陪審員の評議の結果とは異なる判決を裁判官が出すこともあります。だから『ウ・ヨンウ』の第6話、脱北者の女性が被告人だった回では、陪審員が懲役4年という評議の結果を伝えますが、裁判官は懲役1年9カ月、執行猶予の判決を下しました。被告人が自首したという点で減刑されたのですが、その点はウ・ヨンウ弁護士がうっかりして裁判で主張しなかったので、陪審員が考慮できなかった点でした。日本の裁判員は裁判官と一緒に話し合って判決を一緒に決めるという違いがあります。

個人的には日本で裁判員裁判が始まったころに事件担当記者をやっていて、初期の裁判員裁判を何度か取材していたので、韓国の国民参与裁判も実際に一度見てみたいなと思います。


〇第6話は脱北者が被告人でしたが、他の回も韓国の様々な社会問題がテーマとして盛り込まれていました。シナリオ集には脚本家ムン・ジウォンさんのインタビューや登場人物の紹介なども付いています。ウ・ヨンウの紹介では「自身の弱点を隠すよりも正面から突破するたくましいウ・ヨンウ」とあって、第1話で法廷に立ったウ・ヨンウが自閉スペクトラム症という自身の障がいについて打ち明けるシーンがまさにそうでした。名台詞もたくさん詰まったドラマだったので、韓国語ができる方、ぜひシナリオ集も読んでみてください。


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