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文化

新しいトレンドを作り出している韓国のウェブトゥーン

2014-12-09

韓国のケーブルチャンネルで放送中のドラマ「未生(ミセン)」。囲碁が人生のすべてだった主人公のチャン・グレが、プロ入りに挫折し、大手商社に就職、過酷なサラリーマン社会の現実に直面する物語です。韓国のサラリーマンの現実をありのまま描き出した「未生(ミセン)」は、今、韓国で一番ホットなドラマの一つです。


 
ドラマ「未生(ミセン)」の原作となったのは2012年から連載されている同名のネット漫画、ウェブトゥーンです。「未生(ミセン)」は、囲碁の世界で使われる言葉です。日本では「弱い石」といいます。弱い石は、攻められたら縮こまって生きるか逃げ出すしかない石です。多くの人が良い大学を出て、大企業に就職すれば、すべてを成就したと思いがちですが、現実は理想とはほど遠く、実際には弱い石「未生」であり続けることが多く、作家はドラマを通して熱心に生きる多くの「未生」たち、平凡な人たちの姿を描き出したいと思いました。

これまでの韓国ドラマは歴史的な事件や人物に焦点をおいた時代劇、大家族が登場するヒューマンドラマ、善と悪の対立、男女の愛、出生の秘密や不倫を素材にしたものがほとんどでした。新しい素材が必要になった韓国のドラマ界が目を向けたのはネット上で読める漫画、ウェブトゥーンでした。ウェブトゥーンの完成度が高まったということ、一方、映画やドラマのシナリオを書く作家の層が薄くなったことが、ドラマ界がウェブトゥーンに目を向けるきっかけになりました。さまざまな素材を扱うウェブトゥーンを原作にした映画が次々とヒットし、これが本格的なウェブトゥーンのドラマ化につながったのです。

KBSでもウェブトゥーンを原作にしたドラマがいろいろ制作されています。2010年のドラマ「メリは外泊中」をはじめ、去年放送されたドラマ「きれいな男」などは興味津々なストーリー展開で話題になりました。年が変わってもウェブトゥーンを原作とするドラマの人気は冷めていません。今年は、冒頭にご紹介した「未生」だけではなく、天才心理学者を主人公にした推理ドラマ「ドクター・フロスト」などもケーブルチャンネルで放送されていて、視聴者から好評を得ています。

このように全盛期を迎えている韓国のウェブトゥーン。その人気の秘密の一つは、ウェブトゥーン作家の漫画家になる前のキャリアにあります。美術専攻者だけではなく、教師、公務員などいろいろな職業を持っていた人たちがウェブトゥーン作家として活動しているため、発想も素材もさまざまです。また、作品を企画する段階から徹底的な調査とインタビューなどを通してリアリティのある漫画を完成させています。リアリティと奇抜なアイデアが調和したウェブトゥーンはドラマや映画の素材としても申し分ありません。こうした作家の努力は完成度の高いウェブトゥーンを生み出します。クオリティの高いウェブトゥーンは読者の関心を呼び、これが映画やドラマにとって最高のコンテンツとなるのです。



話題のウェブトゥーンには多くのファンがいます。そのため、こうした作品を映画化、ドラマ化する時は原作のファンを満足させるための努力も怠ることができません。漫画の登場人物とできるだけキャラクターが一致する俳優をキャスティングし、ヘアスタイル、衣装、背景など細かいところまで気を配ります。

パソコンで見ていたウェブトゥーンはスマートフォンの普及で、より身近なものになりました。そして、ドラマ化されたウェブトゥーンは世代を越えてより多くの人の関心を集めるコンテンツになっています。映画化、ドラマ化を通して、ウェブトゥーンは、パソコンやスマートフォンに慣れている若い世代だけではなく、アナログ世代にまでアピールしているのです。

ウェブトゥーンブームは今も現在進行形で、この人気が続く限り、ウェブトゥーンを原作とする映画やドラマはこれからも作られていくことでしょう。新鮮なアイデアと共感を呼ぶストーリーで勝負するウェブトゥーンが韓国の新しいトレンドを作り出しているのです。

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