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文化

李範宣(イ・ボムソン)の短編小説「かもめ」

2019-09-24

ⓒ Getty Images Bank

波の音が枕を叩く。

なかなか寝付けない。

いつもなら消えているはずの街灯が

そのままついている。

多分、この入り江に何事か起きたのだろう。

喜ばしいことか、あるいは悲しいことが。


島の住民はまるで家族のようだ。


파도소리가 베개를 때린다.

좀처럼 잠이 오지 않는다.

여느 날 같으면 벌써 나갔을 전등이

그대로 들어와 있다.

아마 이 포구에 또 무슨 일이 생겼나보다.

기쁜 일이나 그렇지 않으면 슬픈 일이.


섬 안은 그대로 한집안이다.



作家、李範宣(イ・ボムソン)の短編小説「かもめ」は、1958年、文芸誌「現代文学」に発表された作品です。主人公の薫(フン)は避難先の釜山(プサン)で中学校の教師になり、7年前、島にやってきました。そして島の人たちと家族のように過ごします。



薫(フン)は昨日の夜もあのハンガリー民謡「ジプシーの月」を聴いた。

二つの灯台に灯りが点され、

靑紅色のリボンが水面に垂れる。

静寂が覆った夜空の中を、波紋のように広がるサックスの音。

しきりに昔へ昔へといざなう悲しみにかすれた音。

毎晩すすり泣くように流れるそのサックスの音を聴くと、

誰が吹いているのかも知らないまま、

彼は自分の部屋の柱にもたれかかり、

星を撒いたような夜空を見上げ、そのまま動くことができなった。


훈은 어제저녁에도 그 <집시의 달>을 들었다.

두 등대에 불이 들어와,

청홍(靑紅)의 물댕기를 길게 수면에 드리울 때,

고요한 밤하늘에 수문(水紋)처럼 번져나가는 색소폰 소리.

자꾸자꾸 그의 상념을 옛날로 옛날로 밀어세우는 그 서러움에 목쉰 소리.

밤마다 흐느껴 흐르는 그 색소폰 소리를 들으면,

누가 부는 것인지도 모르는 대로

그는 자기 방 마루 기둥에 기대앉은 채

별이 뿌려진 밤하늘을 우러러 꼼짝도 할 수 없었다.



#インタビュー:文芸評論家 チョン・ソヨンさん

作家、李範宣(イ・ボムソン)は1950年に勃発し、3年に及んだ韓国戦争中に韓国の南部、巨済島(コジェド)という島で教鞭を取っていました。小説には背景となる島の名前は登場しませんが、作者の巨済島(コジェド)での経験を基に書かれた作品だと考えることができます。小説「かもめ」が書かれたのは韓国戦争後間もない時です。戦争の影響で人と人との連帯感、寛容さ、道徳性などが薄れ、当時の韓国社会はぎすぎすしていました。巨済島(コジェド)で暮らしていた作者はそれでも人々の心の奥にはまだ人情の火種が残っていて、それさえ回復することができれば、温かい社会、時代を作ることができると考えました。小説「かもめ」にはそんな作者の想い、願いが溶け込んでいます。




作家:李範宣(イ・ボムソン)(1920.12.30. ~1962.3.13.、平安南道安州市生まれ)

デビュー:1955年 文芸誌「現代文学」発表した「暗標」で登壇

受賞:1980年 第12回大韓民国文化芸術賞文学部門 受賞など

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