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文化

映画「潔白」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-07-03

玄海灘に立つ虹

〇今回紹介する映画は、新作、パク・サンヒョン監督の「潔白」。新型コロナウイルス感染症が広まった2月後半から映画館で映画を見る人が減っていたが、「潔白」は6月10日に公開し、24日の時点で観客数60万人突破。コロナでなかったらもっと入ると思うが、久々にヒットと言えるヒット。


〇まだまだ日本でも韓国でも新型コロナウイルスの感染者は増えたり減ったりという状況が続いているが、韓国ではほぼ海外作品と独立映画以外の新作公開が止まっていた映画界が6月は本格的に動き出した。先陣を切ったのは、「侵入者」。以前紹介した小説「アーモンド」の著者ソン・ウォンピョンさんが監督。今週はユ・アインとパク・シネが主演のゾンビもの「#生きている」も公開され、少しずつ回復の兆し。


〇個人的には最近の公開作の中で「潔白」が一番おもしろかった。主人公ジョンイン(シン・ヘソン)の父の葬儀の場で起こった農薬殺人事件。容疑者とされた母(ペ・ジョンオク)の潔白を証明しようと弁護士のジョンインが奔走する。農薬殺人の真犯人は誰なのか、なぜ殺人に至ったのか、娘が母を弁護するために調べるなかで、様々な過去が明らかになっていく。


〇ジョンインは父の虐待を受け、家出して以来、母とも会っていなかった。久々に再会した母は認知症で、ジョンインが娘とも分からない状態。母と娘の物語が軸になっている。私がおもしろいと思ったのは、娘として、弁護士として、母が潔白じゃないかもしれない時にどういう選択をするのかという点。ただ母を守りたい、だけでない、過去も含めて事件全体を見渡した時の公平性を裁判を超えて考えさせられる点が、おもしろかった。


〇パク・サンヒョン監督の長編デビュー作。助監督やプロデューサー、短編の監督など映画界での経験は長い。参考にした作品の一つにポン・ジュノ監督「母なる証明」があって、私も見た後すぐに「母なる証明」との共通点を考えていたので、なるほどと思った。


〇ジョンイン役のシン・ヘソンは映画では初主演。ドラマ「秘密の森」で注目を浴びて以来、ドラマでは主演が続いていた。ジョンインは父の虐待から守ってくれなかった母への恨みもありながら、弁護をするという、内面の葛藤がクローズアップでよく伝わってきた。冷たいなかにエネルギーを感じるような、個性を発揮した演技だった。


〇ジョンインの母役ペ・ジョンオクは実際は50代だが、特殊メイクで老け込ませて認知症のおばあさんを演じた。何年も会っていない娘ジョンインとの距離感を表現するため、現場でもできるだけシン・ヘソンと近づかないようにしていたという。


〇ネタバレになるので詳しくは言えないが、予想外の別の事件が浮き上がってくる、というのも含めてシナリオがよくできた映画だったと思う。日本で公開されるのか微妙なラインだなと思いつつ、劇場公開が望ましいけども、オンライン配信も含めて、日本の韓国映画ファンにも届けば、と思う。

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