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文化

小説「七年の夜」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-07-17

玄海灘に立つ虹

○ 今回はチョン・ユジョンの小説「七年の夜」をご紹介。韓国では2011年に発売され、ベストセラーとなったミステリー小説。ある湖で起きた背筋がぞくぞくするような、夏にぴったりの小説。調べたら日本でも翻訳されている。ちょっと遅れて2017年に出た。チョン・ユジョンさんは看護師出身という珍しい経歴を持つ人気作家で、日本では「種の起源」も翻訳出版されている。


○ 2018年には韓国で映画化もされ、チャン・ドンゴン、リュ・スンリョン主演、監督も「王になった男」のチュ・チャンミン監督と、期待作だったが、残念ながら興行的にはふるわず。おそらく、複雑な小説を複雑なまま映画にしてしまったせいかな、と。映画化するにあたって分かりやすくする工夫が必要だったかも。本を読んだ人にとっては、映画もとても良かった。


○ 小説は500ページを超える長い分量で、最初100ページぐらいまではなかなか全体像が見えてこない複雑な書き方。で、それがまた不気味。どこかでつながっていくんだろうなという期待で読み進める。


○ セリョン村、という架空の村が舞台で、本を開くとまず村の地図がある。本当にある村なのかと思って調べてしまった。真ん中にダムがあるのがポイント。シンプルに言えば、このダムをめぐるとんでもない事件と、そこに関わる親子の話。主人公はソウォン、そしてその父、ヒョンス。ヒョンスは映画ではリュ・スンリョンが演じた。


○ 事件の発端は、ヒョンスが起こした事故だった。突然飛び出してきた少女を車ではねてしまう、という事故。少女の名前は村の名前と同じセリョン。セリョンの父親ヨンジェが恐ろしい人物で、映画ではチャン・ドンゴンが演じた。妻とセリョンに日常的に暴力をふるい、でも地元では有力者なので警察も黙ってる。ついに妻に逃げられ、離婚訴訟を起こされていたなかで、セリョンも家を飛び出してしまう。セリョンが父親から必死で逃げている途中に起きた交通事故だった。


○ 一方「殺人魔」と報じられた父のために、ソウォンは親戚の家でも邪魔者扱いされ、学校にも居場所がなく、引っ越し、転校を繰り返して孤独な生活を送っていたなかで、父の同僚だったスンファンと暮らすようになり、事件の真実を知るようになる。


○ 実は殺人魔と呼ばれるヒョンスは息子思いの父親で、本当に怖いのはヨンジェ。ヨンジェの視点で書かれた部分が、一番ぞっとした部分。妻や娘に対する暴力を悪いとも何とも思っておらず、従わない方が悪いくらいに思っている。自分の暴力によって流産した妻に対しても、自分がおまえのせいで息子を失った(息子かどうかも分からない)と嘆き、責め立てるような自己中心的な男。なので、そんなヨンジェから逃げ出したセリョンをがんばれ、逃げ切れ、と心の中で応援していたところで事故が起こるという、読者としては立ち直れないような衝撃を受けた。


○ 映画でもチャン・ドンゴンの悪役っぷりが印象に残った。日本でもDVDで見られるようなので、私のおすすめとしては、小説を読んで映画を見てほしい。

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