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文化

映画「半島」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-08-07

玄海灘に立つ虹

〇今回はヨン・サンホ監督の映画「半島」をご紹介。ゾンビもの。日本でも来年1月の公開が決まっていて、タイトルはまだ確定ではないが、「ペニンシュラ」になりそうな気がする。4年前、2016年の夏に公開され、1156万人の観客を動員した大ヒット映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」、原題「釜山行」の続編にあたる。監督も同じヨン・サンホ監督。7月15日に公開され、26日現在、観客数286万人。コロナの中では相当なヒットと言える。世界的にも注目されていて、185ヵ国で上映される予定。


〇公開が「新感染」の4年後というだけでなく、内容も4年後。「新感染」では、釜山行のKTXの中で乗客が次々にゾンビに襲われる様子が描かれたが、「半島」の冒頭で描かれているのを見れば、KTXの中だけでなく半島全体がゾンビに襲われる。その半島からいったん船で香港に逃げたジョンソク(カン・ドンウォン)が「半島」の主人公。4年後、廃墟と化した半島に戻ってくる、という話。わざわざ危険を冒して戻るのは、半島に残された大金を回収するため。


〇公開前、報道向け試写会に行って、記者会見(韓国では記者懇談会と言う)にも参加した。生カン・ドンウォンも見てきた。が、実は、カン・ドンウォン本人も指摘しているように、ジョンソクは「半島」の中でヒーロー的な役割ではない。ヨン・サンホ監督も「普通の欲望を持った普通の人が主人公」と話している。ゾンビものゆえ、主人公が普通の人の方が「リアリティーを獲得しやすい」とのこと。そこは「新感染」との共通点。ちゃんと人間が描かれているから、見られる。


〇一方で、ヒーロー的な役割を担っているのは、実は半島で生き残っていた家族。ジョンソクは半島から逃げるなかで家族を亡くし、失意のなかで4年を過ごしていた。そんなジョンソクにとって半島で新たに出会った家族の存在が希望になる。

家族はイ・ジョンヒョン演じるミンジョンとその二人の娘、そしてクォン・ヘヒョ演じるおじいちゃん。もちろん俳優クォン・ヘヒョさんはおじいちゃんというような年齢ではないですが、役柄がおじいちゃん。どっちかというと弱者に属する女性、子ども、高齢者が活躍するところがおもしろかった。


〇特に、お姉ちゃんのジュニ(イレ)はどう見ても未成年だが、車の運転技術がすごい。さらに、妹のユジン(イ・イェウォン)がラジコンを巧みに操ってゾンビをまき散らす。ゾンビは「新感染」の時にも光と音に反応する性質だったのは、今回も同じ。今回は4年後なので、その特性をよく知ったうえでの戦い方。ユジンは劇中でも天真爛漫なキャラクターだが、演じた俳優のイ・イェウォンちゃんは記者会見でも、カン・ドンウォンについて「有名な人とは最初知らなかった。周りの人に昔핫했다(人気だった)と聞いて不思議な気がした」と言って、カン・ドンウォン本人はじめ出演者、報道陣みな一斉に吹き出した。ゾンビものは息もできないような緊張感が漂うので、ユジンみたいなゆるいキャラクターがいるのが重要だと改めて感じた。


〇会見での監督の言葉で印象に残るのは、「みんなが半島から脱出しようとするが、実はどこにいるかよりも、誰といるかが大事なんだと思う」。脱出した先で幸せなのか?というのは本人の問題でもある。まさにジョンソクがそうだった。せっかく脱出しても廃人のように過ごしていた。もちろん、今のコロナの状況とは関係なく作られた映画だけでも、当たり前のようにどこにでも行ける状況じゃなくなった今、身に染みる言葉。


〇とはいえ、何よりも、アトラクションのように楽しめる映画という意味で、映画館で見るべき映画。出演俳優の一人が「遊園地のような映画」と評したのは、その通りと思った。20分にわたる大規模なカーチェイスがあったり、CGの技術も素晴らしく、てんこもり、という感じ。日本では公開までしばらくあるけども、来年1月にはぜひ映画館で楽しんでほしい。

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