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文化

映画「権力に告ぐ」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-11-06

玄海灘に立つ虹

〇やっと昨日、2週間の隔離から解放されてスタジオに来ることができました成川です。今日はチョン・ジヨン監督の「権力に告ぐ」。これ、実は武田さんと韓国観光公社福岡支社のユーチューブライブ配信の時、武田さんからもうすぐ日本で公開される、ってご紹介いただいたんですよね。その時は「権力に告ぐ」って、何?ってぽかんとしてたんですけど、韓国タイトル「ブラックマネー」なんですね。韓国では昨年公開され、250万人くらいの観客数でまあまあのヒットという感じでしたが、個人的にはイ・ハニの演技が好きでした。


〇主演は、武田さんも何度か共演されているチョ・ジヌンさん。検事役ですけど、型破りな、全然上司の言うことを聞かない破格の検事。映画は実際に起きたローンスター事件という、外換銀行買収と売却をめぐる事件がモデルになっているそうです。韓国では有名な事件のようですが、「国家が破産する日」の1997年IMF経済危機ほどは日本では知られていないので、へえ、こんな事件あったんだ、と思う人が多いんじゃないかなと思います。


〇チョ・ジヌン演じるヤン・ミンヒョク検事は、自身が取り調べた被疑者が、取り調べの過程で検事からセクハラを受けていたという内容の携帯のメッセージを残して自殺したことで、あらぬ疑いをかけられるんですね。汚名をそそぐために調べるうちに、別のもっと大きな経済事件が背景にあることに気付いていく。映画の中では、実際のローンスター事件とは固有名詞は違って大韓銀行を米国のスターファンドが買収した、となっています。そのスターファンドの代理人弁護士がイ・ハニ演じるキム・ナリ。びくともしない貫禄と、切れ者のキャラクターがすごく似合ってて、ますます好きになりました。英語もペラペラでかっこいいですよね。


〇ヤン検事は、手段を選ばず、捜査のためには法も犯してしまうというキャラクターなんですが、そうまでしても、相手は本当に手ごわい。どこまで実話かは置いておいて、経済事件って大きなお金が動いている分、怖いなあと思いました。実際に韓国では検察をめぐる疑惑がよく報じられていて、こういう映画を見ていると、本当のところはどうなんだろうって思ったりもします。捜査させないための圧力だったりもするのかな、って。映画の中では、この事件を再捜査しようとした検察総長が賄賂を受け取った疑いで辞任に追いやられます。韓国では実話をもとにした映画がすごく多くて、興行的にも成功することが多いのは、それだけ実際の出来事やニュースに対する関心の高さもあるのかなと思います。


〇経済事件なので、専門用語も多く、難しくなりがちなんですが、無鉄砲なヤン検事のキャラクターがユーモラスで、楽しめました。あきらめそうなところで全然あきらめない、最後まで突っ走ってくれるので、事件のもやもやするような展開も、ヤン検事一人で払しょくしてくれる。こんな検事いたらいいけど、いないだろうなというファンタジーのように感じました。


〇逆にキム・ナリ弁護士の最後の決断が、現実はそういうことも大いにあるだろうな、と思わされるもので、ある意味納得できました。実際のニュースはその時だけ騒いで、時間がたてば忘れられていきますが、こうやって映画によって、フィクションはフィクションでも、改めて全体の構造が見えてくるのはおもしろいなと思いました。

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