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文化

日本解説本「日本についての新たな考え」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2021-04-16

玄海灘に立つ虹


今日ご紹介する本は、「日本についての新たな考え(일본에 대한 새로운 생각)」という本で、著者は元韓国経済新聞記者で、現在はシサアカデミー日本経済社会研究所の所長、チェ・イナン(최인한)さんです。日本を解説する本ですが、韓国のジャーナリストから見た日本について一緒に話してみるのもいいかなと思い、選びました。今年1月に出た本なのでかなり最近のコロナの感染が広まってからの話も出てきます。


著者は東京特派員の経験もあり、日本について詳しいんですが、特に経済が専門の方です。文化もちょっと似ていると思うんですが、経済も基本的には日韓関係がいい方がいい、相互にウィンウィンになれる傾向がありますが、現実は政治的な日韓関係に振り回されて、日韓で仕事をしている企業や個人は悪影響を受けることが多々あります。

著者のスタンスは、「まずもっと日本を知ろう」です。日韓で大小さまざまな誤解がありますよね。それについても丁寧に解きほぐす内容になっています。


例えば韓国では日本酒のことを「サケ」と言いますよね。日本では酒はアルコール飲料の総称なので日本酒も酒ですが、焼酎もビールもワインも酒ですよね。私も韓国の人に日本酒のことを言う時には、分かりやすいだろうと思ってつい「サケ」と言ってしまいます。この話は2019年に韓国で日本製品不買運動が広がった時に韓国の人たちが日本酒や日本のビールを飲まなくなったという話のなかで出てきます。韓国では本当に不買運動の直前までアサヒビールをはじめ日本のビールがものすごい人気だったのが、一気に売れなくなったんですよね。だけどもやっぱり私の周りには「ビールは日本のがおいしい」と言ってなんとか入手して飲み続ける人もいました。


日本の不動産価格の話も出てきます。コロナがまだ広まる前、東京オリンピックを前に東京や大阪の不動産価格が上がっていたそうなんですが、特に首都圏のマンション価格がバブル期並みに高騰していたようで、私はいつも韓国のニュースを見ながら、日本のバブルみたいだなと思っていたんですが、日本も上がってたんですね。私が個人的に疎いのもあると思いますが、韓国ではとにかく不動産価格に関心が高い。ニュースでもいつもやってるし、人に会って話す話題でもどこがどれだけ上がったという話がよく出てきます。日本の不動産価格についても日本人よりむしろ韓国の人の方が詳しかったりするのかなと思いました。


日本はサムライの国だ、というのも、たぶん日本の人たちあまり自覚はないんじゃないかなと思います。著者は、明治維新の主体となった勢力が武士で、今もその子孫が政治に携わっている、と述べています。その特性を知ることも日本の政治を理解する助けになる、ということです。私は周りに日本学を専攻している学生や研究者が多いんですが、みんなルース・ベネディクトの「菊と刀」を読んでるんですよね。米国の文化人類学者が日本文化について説明した本です。この本の影響もあって、韓国を含む海外の人たちは日本はサムライの国という認識ができているみたいです。特に日本人の「義理がたいところ」や「忠誠心のあるところ」がサムライの国と言われる理由のようです。これは実は映画学科でも、日本は「忠臣蔵」のようなストーリが好きな傾向があると学びます。というのは、「組織の名誉のためには自分の命を捨てても行動する」というのが忠臣蔵だと思うんですが、例えば現代社会であれば会社への忠誠など、確かにそういう傾向はあるのかなと思う一方でだんだん個人志向が強くなってそうでなくなっているとも思います。


日本について全然知らない、という韓国の方ももちろんいますが、少し知っている人の中では、日本の「ものづくり」、職人や老舗に関心を持つ人も多いですよね。著者は、醤油で知られるキッコーマンや、寺社建築で歴史ある金剛組など、老舗企業を例に挙げながら、時代の変化に耐え抜いてきた企業にこそ、コロナ時代を生き抜く知恵を学べるのではないか、と述べています。

日本と韓国、隣の国から学べることはお互いにたくさんあると思います。この本の日本語版はまだのようですが、とても読みやすいスタイルで、内容も日本についてなので、韓国語を学んでいる人にはぴったりかなと思います。

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