自己啓発本『セイノの教え』
2024-03-21
昔々、ある村に両親といっしょに暮らしている兄弟がいました。
兄は欲深く、弟は親思いのやさしい人でした。
お兄さんにいきなり家を追い出された弟は、
夫を亡くし、一人になった母親のために誰よりも懸命に働きました。
山に登って木を切っていた弟が、ハシバミの実を袋に入れて立ち上がった時、
急に雨が降り出しました。
「おや?家だ。あの家で雨やどりをさせてもらった方が良さそうだな」
外は薄暗くなっていました。
その時、外から変な音が聞こえてきました。
「トッ~ケビトッ~ケビ!ケビケビトッケビ~!カルビ出てこい!ドン!チャプチェ出てこい!ドン!」
トッケビが棍棒で床をドンと叩くと、あ~ら、不思議。
おいしそうなカルビの煮込みやハルサメと野菜を炒めたチャプチェが現われました。
朝から何も食べていない弟はお腹が空いてたまりませんでした。
山で拾ったハシバミの実を一つそーっと取り出し、口に入れて噛みました。
その音を聞いたトッケビたちが屋根裏の方に近寄ってくるではありませんか。
弟はその時、子どもの頃、母親から聞いた話を思い出しました。
「夜明けを知らせる鶏の鳴き声が聞こえると逃げていくということか...
コケコッコー!コケコッコー!」
鶏の鳴き声に驚いたトッケビたちは慌てて帰っていきました。
弟はトッケビが落としていった棍棒を背負子にのせて、家へ向かいました。
弟は母親に山で見たトッケビたちの話をしました。
そして、先ほど見たトッケビのように踊り、歌い始めました。
「まあ、驚いた!こんなに大きな家が現われるなんて!」
「母さん、もうお腹を空かせることはありませんね!」
弟から話を聞いた兄は急いで山に登りました。
そして、トッケビたちが現われるという空家の屋根裏に隠れました。
日が暮れると、弟の言葉どおり、トッケビたちが現われ、
兄は弟に聞いたとおり急いで鶏の鳴き声を真似て叫びました。
「あっ!こいつは...棍棒を盗んでいった奴だ!」
トッケビたちは棍棒でお兄さんを叩き、こらしめました。
夜明けを知らせる鶏の鳴き声が聞こえると、トッケビたちはようやく引き上げていきました。
兄は泣きながら弟の家へ向かいました。
その後、兄弟はどうなったでしょう?
弟と兄は、年老いた母親の世話をいっしょにしながら
末長く、幸せに暮らした、とさ。
2024-03-21
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