自己啓発本『セイノの教え』
2024-03-21
昔々、ある村にカプスという名の若いお百姓さんが住んでおりました。
10年間、誰よりも懸命に働いてきたカプスは、つい最近、
欲張りな地主から山のふもとに小さな畑を買い取ることができました
カプスは目が覚めるとすぐに石だらけの畑に向かい、一日中、石を掘り出しました。
そんなある日のことです。
畑に大きな古いかめが埋っているのでした。
「ちょうど良かった。水がめにぴったりだ」
カプスは鍬をかめに入れ、背負子に背負って家に帰りました。
翌朝、カプスが畑へ出かけようとかめから鍬を取り出しました。
ところが、カプスがその鍬を取り出すと、かめの中にまた鍬が現われました。
何度取り出しても、かめの中に鍬が現われたのです。
その夜、カプスは寝る前にかめの中にじゃがいもを一つ入れてみました。
昨日の夜、食べ掛けのじゃがいもを一つ入れて置いただけなのに、
何個取り出してもかめの中からじゃがいもが出てきました。
「このかめに鍬を入れると鍬が、ふかしたじゃがいもを入れるとじゃがいもが
たくさん出てきた...かめに何かを入れておくと、翌朝、何倍にも増えるということか...」
カプスは自分の目で見たにもかかわらず、信じられない思いでした。
不思議なかめのうわさはうわさは広がり、欲張りな地主の耳にも入りました。
「おーい、カプス、いるかね?
聞いた話だと、そのかめはわしがお前に売った畑から出てきたというじゃないか。
だからかめを返してもらいに来たのじゃ」
話を聞いた村の人たちは欲の深い地主をののしり、
役所を訪ねてみるよう勧めました。
結局、カプスと欲張りな地主は村を管理する役所を訪ねました。
役人は判決には関心がなく、
その不思議なかめを自分のものにしたいと思うだけでした。
「どちらの言い分にも一理あるが、かめを割って分けることもできないし...
仕方がない。このかめは役所で管理することにしよう」
役人は役所ではなく、自分の家の居間にかめを持っていきました。
そして、家族の誰もかめに触れてはならないと言いました。
ところが、好奇心をそそられた役人の父親がかめの中を覗き始めました。
かめを覗き込んでいた役人の父親がかめの中に転げ落ちてしまいました。
役人は急いで父親の手を取ってかめから引き出しました。
ところが、かめの中からまたもや助けを求める父親の声が聞こえてくるではありませんか。 役人の家はかめから次から次へと出てきた父親でいっぱいになりました。
「もうこりごりだ!助けてくれぇ」
役人はカプスのかめに欲を出したことを後悔しましたが、もう手遅れでした。
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