自己啓発本『セイノの教え』
2024-03-21
ドファが布団からはみ出したイスの足をぼんやりと見つめた。
以前は出かける時、よくイスの足の甲に口づけをした。
片手で彼の足を覆い、毛の生えた足の指をなで、
布団の中に入れてやったものだ。
ドファはその足、
いろんな所にいっしょに行き共に歩いた恋人の足をじっと見つめ、
結局何もしないまま背を向けた。
何よりイスはドファがひとり大人になっていく過程を
見守るのが辛かった。
ドファの言葉遣い、表情、話題が少しずつ変わっていき、
彼女の世界が広がっていった。
彼女の世界が広がるごとに自分が外に押し出されるようで、
それに耐えるのが辛かった。
ドファは国が認めた市民、
国が保証する国民だった。
反面、イスは学生でも、社会人でもない、曖昧な国民だった。
이수는 무엇보다도 도화가 혼자 어른이 돼가는 과정을
지켜보는 일이 힘들었다.
도화의 말투와 표정, 화제가 점점 변하는 걸,
도화의 세계가 커지는 걸,
그 확장의 힘이 자신을 밀어내는 걸 견디기 어려웠다.
더구나 도화는 국가가 인증한 시민,
국가가 보증하는 국민이었다.
반면 이수는 학생도, 직장인도 아닌 애매한 국민이었다.
#インタビュー:文芸評論家 パン・ミノさん
ドファは現実の世界で見られるごく平凡な人物です。平凡な人たちはそれなりの欲望や理想などを追求し、またいくらかの同情や未練を持ったまま生きていきます。小説に登場するドファという人物もそんな平凡な女性だと思います。これといった職業もないイスから逃れたいと思うと同時に、恋人に対して憐憫を抱いている彼女は現実の世界の平凡な人たちの微妙な心理を映し出す登場人物だと言えます。
杯を持ったイスの手がかすかに震えた。
時間が経つほど、食堂はたくさんの客で賑わった。
数百人が大きな声で騒ぎ立てる中、
黙りこくっているのはイスとドファ、二人だけだった。
ドファは、昨日家主に会った後、
自分が感じたのは裏切られたという気持ちではなく安堵だったと気づいた。
まるで、長い間、イスが先に
過ちを犯してくれるよう願っていたかのように。
ところで、イスはどこに行ったのだろう。
ドファは喉につっかえた過去を振り払うように、
唾を呑み込んだ。
잔을 쥔 이수의 손이 가늘게 떨렸다.
식당 안으론 시간이 지날수록 꾸역꾸역 사람이 더 모여들었다.
수백 명이 왕왕거리는 어느 횟집에서,
모두가 소리 높여 떠드는 가운데
아무 말도 하지 않는 사람은 이수와 도화, 둘 뿐이었다.
도화는 어제 저녁 집주인을 만난 뒤
자신이 느낀 게 배신감이 아니라 안도감이었다는 걸 깨달았다.
마치 오래전부터 이수 쪽에서 먼저
큰 잘못을 저질러주길 간절히 바라오기라도 한 사람처럼.
그런데 이수는 이제 어디로 갈까?
도화가 목울대에 걸린 지난 시절을 간신히 누르며
마른 침을 삼켰다.
作家:金愛蘭(キム・エラン)(1980.08.15.~、仁川広域市生まれ)
デビュー:2002年 小説「ノックしない家」
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