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文化

映画『別れる決心』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2023-01-05

玄海灘に立つ虹


2023年、明けましておめでとうございます。今年初のこのコーナーですが、ご紹介する映画はパク・チャヌク監督の『別れる決心』です。昨年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した作品で、何度か言及はしていましたが、いよいよ日本で2月に公開ということで、12月にパク・チャヌク監督が来日し、先行上映されて、いち早く見られた方もいらっしゃるかと思います。

刑事役のパク・ヘイルと、容疑者役のタン・ウェイが主演のサスペンスロマンス。ネタバレ厳禁だそうなので、そのあたりは注意しつつ、ご紹介したいと思います。

映画のストーリーをざっくり言うと、タン・ウェイ演じるソレの夫の転落死をめぐって、ソレが容疑者として浮上します。パク・ヘイルは事件の捜査にあたる刑事ヘジュンを演じ、ヘジュンとソレは取り調べで対峙しつつ、次第に互いに惹かれていきます。ヘジュンは冷静に事件について見極めようとする刑事としての使命感もありつつ、一方でソレが犯人でないことを願う気持ちも出てきます。

私自身は、パク・チャヌク監督来日時には別の監督の通訳に入っていて、残念ながら直接話を聞くことはできなかったんですが、たくさん報道されている中から、パク・チャヌク監督が話した内容を拾ってみると「愛はとても大きなミステリーで、この二つはとてもよく似合う要素だと思います。『どうして私はあの人に惹かれるのだろうか』というのは口では言い表せないほどの大きな謎だと思います」と、話していたそうです。


刑事と容疑者、ヘジュンは妻がいて、ソレも夫を亡くしたばかり。惹かれてはいけない間柄で、どうしても惹かれてしまう2人。事件そのもののミステリーと2人の感情が絡み合って心が揺さぶられる、そんな映画でした。どうしようもない感情、それを抑え込んで別れる決心をする瞬間。さすがパク・チャヌクと思わせる描き方で、引き込まれました。

そして、これは偶然なのですが、私が通訳を担当していたのは今回日本で『群山』『福岡』『柳川』の3部作が公開されたチャン・リュル監督だったのですが、チャン・リュル監督も「なんで監督はいつも愛をテーマにした映画を作るのですか」という質問に対して、「私自身が分からないからだと思う」というふうに答えていたんですね。愛はミステリー、分からないから繰り返し作品のテーマになるんだなと改めて思いました。


そしてこの映画の大きな魅力の一つはタン・ウェイの韓国語だったと思います。タン・ウェイは中国出身の俳優ですが、韓国のキム・テヨン監督と結婚してるんですよね。実際に韓国語をどの程度話せるのかはよく知らないんですが、映画でタン・ウェイが話す韓国語がちょっと不自然なところがとってもセクシーで、「내가 그렇게 나쁩니까(私がそんなに悪いですか)」など流行語のようになったセリフもいくつかあって、私がとても印象的だったのは「마침내」という韓国語でした。「とうとう/ついに」という意味ですが、こんなセクシーな響きの単語だったかなというぐらい、タン・ウェイが言うと魅力的なんですよね。映画を見た後は「마침내」という言葉を聞くたびにタン・ウェイを思い出すほど印象的でした。


私の親しくしている韓国の俳優さんも『別れる決心』にちょっとだけ出ていて、話を聞いたんですけど、受け取った台本が自分の出演部分だけだったそうなんですね。全体の台本を手にしていたのはたぶん主演の2人だけだろうと言っていて、それだけネタバレ厳禁に気を使っていたみたいです。確かに1回目は展開を知らずに見るのがおもしろいですが、展開を知っても、2回3回と見たくなるような映画でもあります。年末の2022年の本の振り返りでもお話しましたが、韓国では『別れる決心』のシナリオがベストセラーになっていて、それほどセリフがいいんですよね。皆さんも2月に公開されたら、セリフも吟味しながら、パク・チャヌクが描く愛とミステリーの魅惑的な世界に浸ってみてほしいなと思います。


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