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ライフスタイル

第629話 小説『人間失格』がここにきて人気?

#アジュンマの井戸端会議 l 2021-11-09

玄海灘に立つ虹


太宰治の『人間失格』が、韓国で、今年に入ってからじわじわと売れ続けているそうです。主に世界の名作シリーズを出している出版社、民音社が出版した分だけで今年に入ってから先月までに7万部余りが売れたということです。去年1年間に売れた部数(2万3千部)の3倍を超える売り上げです。


マーケティングを別途に行ったり、インフルエンサーの推薦などもなかった状況です。韓国ではJTBCで同じタイトルの『人間失格』というドラマが放送されていましたが、視聴率が思わしくなかったうえ、ドラマの内容も本とは関係がなかったため、ドラマの影響ではないだろうと出版社の関係者は話しています。大手書店の教保(キョボ)文庫で、今年5月、外国小説のベストセラートップ5入りし、今もその座を維持しているということです。


他人の考えが分からない、怖い、その恐怖心から他人が喜ぶことを演じ続け、周囲からはいい人と判断されるも、結局は人間に対する恐怖から破滅への道をたどる『人間失格』の主人公、葉造。この小説が売れているのは、最近の韓国の若者たちが葉蔵に自分自身を投影しているからだとの分析もあります。教保文庫のベストセラー担当者は、「‘スマイル仮面症候群’といえる、強要された笑い、作り笑いの状態が続くことに対する考察が描かれ、人に接することが苦手だという主人公の気持ちが共感を呼んでいるのではないか」と話しています。スマイル仮面症候群は男性にはほとんどなく、働く女性に多く見られるということですが、実際、韓国の書籍販売サイトのアラジンによりますと、この本を買ったのは20代の女性が最も多く、全体の30%を占めていたということです。


韓国ではこの小説を原作にした演劇も今月上演されました。韓国の劇団が脚色し、去年12月に上演する予定でしたが、コロナ禍で上演がかなわず、今年11月にようやく上演にこぎつけたものです。1948年に発表された『人間失格』という小説が、いまもなお、芸術の題材として魅力のあるものとなっているのです。


ちなみに韓国ドラマの『人間失格』ですが、今年9月から10月にかけてオンエアされました。最高視聴率は4.2%(ニールセンコリア)。主演は主に映画で活躍していたチョン・ドヨンとリュ・ジュンヨル。ともに久々のテレビドラマ出演ということで大きな話題をさらい、しかも監督は『8月のクリスマス』(1998)、『外出(邦題:四月の雪)』(2005)などを演出したホ・ジンホが務めましたが、視聴率の面ではやや残念な結果になりました。ウィキペディアには、太宰治の小説とはストーリーの展開は異なるものの、主人公が人生について持っている世界観や視聴者に伝えようとしている感情のメッセージがやや暗いところなどが小説に似ていると書かれていました。

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