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ライフスタイル

自殺者まで ― 賃貸住宅詐欺

#マル秘社会面 l 2023-05-10

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

千人を超える被害者、3人の若者が自殺、数千億ウォンの被害

韓国で今、大きな社会問題となっている賃貸住宅詐欺の被害状況です。この事件の背景には韓国特有の「チョンセ」と呼ばれる住宅賃貸制度と、この数年間の驚異的な住宅価格の高騰、バブルがあります。

日本など多くの国では住宅の賃貸の際には、毎月決まった金額の家賃を家主に支払い、 契約時には保証金、あるいは敷金、礼金などを別途に支払うことになりますが、その場合の保証金、敷金は多くても家賃の数か月分程度の金額です。それに対して韓国の「チョンセ」制度というのは毎月の家賃は無い代わりに、該当物件の売買価格の60-70%くらいの金額を契約の際に保証金として支払い、契約が終了して引越す際にはそのお金がそっくり戻ってくるというシステムです。

では家主は家賃ももらわずどうするのかというと、金額的に大きい保証金をもとでに資産の運用を図るのです。昔は銀行の利子が10%くらいあったので、家主は保証金を銀行に預けるだけで十分、家賃相当の利益を得られていました。しかし今は銀行の利子が低いので、家主はそれを元手にさらに他の不動産を購入したり、あるいは株を買ったりなど、積極的な資産の運用を図るようになりました。

今回問題となった家主は、毎回、該当物件の売買価格の80%近い金額を保証金として受け取り、その金でまた他の物件を買っては同じように80%の保証金をもらって貸すという行為を繰り返していました。日本のアパートに当たるビラを数十件購入し、その住宅価格の80%近い保証金をもらい1139人もの人に貸していた家主が、突然、病死してしまいます。多数のビラの購入には入居者から預かった保証金はもちろん、銀行からの借金もあり、結局、家主の死亡後、多数の入居者が保証金も返してもらえず、かつ住んでいる家が競売にかけられるという状態になってしまいます。このような「無資本ギャップ投資」とよばれるチョンセ住宅詐欺が仁川の1139件以外にも、首都圏では東灘(ドンタン)新都市、金浦、高陽市、富川、ソウルでは江東区、陽川区、九老区など、そして釜山や大邱など、全国各地で起きています。また家主が無理な不動産投資を重ね、さらに保証金を横領するなどして結局破産してしまうケースも多数見られます。

被害者はどんな風にこの詐欺にあうのか。例えば仁川市に住むキムさんは2019年に結婚し、新居として仁川の1DKのマンション、売買価格1億ウォン程度の物件を7300万ウォンの保証金でチョンセ契約をして入居します。2年後には再契約し、その際にはさらに保証金が8300万ウォンに引き上げられたため、差額をまた払います。それがその後、突然家主が姿を消し、住んでいたマンションは競売にかけられてしまいます。保証金も返してもらえず、かつ競売で落札した新しい家主からは立ち退きを要求されてしまいます。こういうケースが全国で起きているということです。

チョンセという韓国特有の不動産システムと、全国的な不動産価格の高騰が人々に不動産こそ資産運用の一番の手段だという間違った認識を与えてしまい、それが今回のような詐欺事件を巻き起こしてしまったのではないでしょうか。

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