韓国人は身長に執着しているとよく言われてきました。
芸能人だけでなく普通の男女がシークレットインソール（中敷き）を使って背を高く見せたり、背丈が伸びるといわれる韓方薬を子供に飲ませたり、背が伸びる運動器具を使わせたりエクササイズをさせたりする親もいます。

しかし、身長に対する強迫観念のようなものから韓国人が抜け出している兆候もあります。朝鮮日報が全国の男女1658人を対象にアンケート調査を行った結果、回答者の42.5％が「今の自分の身長に満足している」と答えています。これを多いとみるべきか少ないとみるべきかは意見の分かれるところですが、半数以下であることを考えると、身長に対する執着のようなものが少しは減ってきたのではないかと思われます。併せて、「これくらいの背丈は欲しい」と思う基準も低くなってきています。

男性の「1メートル80センチ」という身長は、韓国ではイイ男の象徴のような数字とみてもよいでしょう。いわゆる「ルーザー（LOSER）」発言が大きな波紋を呼んだのは2009年のことでした。テレビのバラエティー番組に出演した女子大生が「背が１メートル80センチ以上の男性がいい。背の低い男性はルーザー」という発言をしたのが、「1メートル80センチ以下の男性はルーザー」だという意味の発言として広まり、物議をかもしました。

ちなみに1メートル80センチというのは韓国人男性の身長で上位10％くらいに該当します。前述のアンケートでは、回答者の46.3％が「韓国社会で最も人気のある男性の身長」は１メートル76～1メートル80と答えました。少し、小さくなっているのです。ただ、過去自分の背丈で悩んだ世代が大人になり、今度は子どもの背丈で悩む親となったことで、前述したように背が伸びるように運動をさせたり、韓方薬を飲ませたりする親もいるのですが、一方でそんな親の心配が子どもにストレスになると考える親が増えていることも事実です。

それに子どもたちの好きなアイドルは背丈は関係ありません。BTS（防弾少年団）のメンバーのジミン（173.6センチ）やシュガー（174センチ）など人気アイドルは1メートル70センチ前半が多く、Wanna Oneのハ・ソンウン（167センチ）、Seventeenのウジ（164センチ）、ハイライトのヤン・ヨソプ（168センチ）など160センチ台のアイドルも多数います。芸能事務所の関係者は、「最近のアイドルは背がそう大きくない男子も多い。プロフィールに身長や体重を書いたりして敢えて強調はしないが、隠しているわけではない。背丈を聞かれて恥ずかしがることもない。新人のオーディションも背丈よりどれだけ魅力があるかをみる」と話しており、身長をサバ読んでいた以前とはだいぶ雰囲気が異なっています。

専門家らは、「背丈を重視する風潮は、いわゆる「外見至上主義」の延長線上にあるもので、外見至上主義に対する批判や反省から、身長に対する不要な偏見がなくなってきている」と話しています。また「美しさを定義する方式が変わってきており、身長はそのうちの要素の一つに過ぎなくなっている」、「外見至上主義が完全になくなったわけではないものの、外見を評価する基準が以前より多様になっている。個性のあるスタイルやメーキャップなどが身長に劣らず注目されるようになり、背丈だけにこだわらなくてもよくなった」などという指摘もあります。