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ライフスタイル

第538話 韓国のお雑煮、トックッの話

#アジュンマの井戸端会議 l 2020-01-21

玄海灘に立つ虹

© Getty Images Bank

今日は、旧正月に食べられるトックッのお話です。トッがお餅、クッがスープの意味です。韓国のトッはもち米でなく、うるち米でつくられます。


韓国には「トックッを食べてこそちゃんと年を取れる」という意味の言葉があります。それだけお正月にはトックッを食べることが大事とされているのです。「年を取りたくないから、トックッを食べない」という冗談を言う人もいます。


トックッは地域や家によってスープなどが異なります。スープにトッが入っていて、ネギや錦糸卵などがのせてあるものが多いですが、スープでよくあるのが牛骨を煮込んでつくるものです。でも家庭でじかに煮込む家は少なく、牛骨のスープを買って、それでトックッをつくることが多いです。あとはお肉や海産物でおだしをとって作る場合もあります。


今日韓国で食べられているトックッは、朝鮮王朝時代の風習について記されている『東国歳時記』などでその記述が見られます。東国歳時記では、トックッは、トッを小銭の大きさに切って、牛肉かキジの肉に赤唐辛子の粉を混ぜて煮たもの、と書かれているそうです。お米があまりなかった時代に、ご飯を炊くのでもなく、お餅、トッをつくるのですから、その過程はいろいろな意味で容易ではなかったでしょう。それでトックッを食べることが大事に思われてきたのかもしれません。


近代文学の先駆者のひとりで歴史学者でもあるチェ・ナムソンの『朝鮮常識問答』によると、トックッを食べることは、白いものを食べて新年を始めることであらゆるものが新しく生まれ変わることを意味すると解釈しています。また、心身が誤った欲にまみれず、白いトッのように清らかであることを望む気持ちが込められているという見方もあります。色だけでなくトッの形にも意味があります。トックッのトッは、細長い円柱型の塊をのばし、これを斜めに薄く切ったものです。スーパーなどでは、円柱形のモチを斜めに薄く切ったものや、細長い円柱状のものが、袋に詰められて売られていることが多いです。細長くのばすのは財産が増えるように、それを薄く切ることで、財貨が豊かになることを祈願しているということです。


地域によってトックッの種類や作り方が少しずつ異なりますが、福を祈願するという意味はどこも同じです。北韓の開城(ケソン)地方では、ヒョウタンの形をしたお餅のチョレンイトッを入れてトックッを作って食べます。これには、トッを吉祥を象徴するかいこのまゆの形に作ったという説や、子どもたちがひょうたんの形をした木でできたお守りをつけていると厄除けになるという俗説などがあります。南海岸のコジェ島ではタラを入れたトックッが食べられています。巨済(コジェ)島ではタラが多くとれるうえ、タラはその大きな口に福をためてやってくるといわれているため、この時期のタラを「福タラ」と呼ぶのだそうです。 


ちなみにトッマンドゥクッをご存じでしょうか。トッ+マンドゥ(餃子)+クッです。今でこそトッマンドゥクッを食べられる食堂は多いですが、以前はトックッとマンドゥクッは別々につくられ、食べられていたそうです。特に北韓の平安道(ピョンアンド)、黄海道(ファンヘド)、江原道(カンウォンド)などでは、旧正月の朝、トックッよりマンドゥクッのほうがよく食べられているということです。

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