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ライフスタイル

第557話 「一日1カン!」 ピ(Rain)の復活なるか

#アジュンマの井戸端会議 l 2020-05-26

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

歌手で俳優のピ(Rain)の「カン」(GANG)のオフィシャルミュージックビデオの視聴回数が、5月25日の時点で1086万回を記録しています。「カン」はピが2017年12月にリリースしたミニアルバムのタイトル曲です。


カンとは、「何事にも負けずに最後まで意地で踏ん張る」「自分の主張を曲げない強情な姿勢」を言い表す言葉で、場合によっては名詞形で「ド根性」とか「度胸」のような言葉で訳すことができます。タイトルからしてかなり汗臭い=スマートとは言えない感じですし、歌詞も「王の帰還だ。マネージャーの電話のベルはひっきりなしに鳴っている。15年も続けてきたんだ。自他ともに認める俺の価値。生まれつきのカッコよさは隠せない。もう一度舞台を濡らせ、レインエフェクトで」というように自己陶酔の極みで、正直、相手にしてられないという酷評のほうが多かった曲です。当時3年ぶりのカムバックだったピは、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)とヒップホップを取り入れて作った曲だと説明しています。またダンスのスタイルも、「クラブで皆で踊れるような曲にしたい」とも語っています。とにかく思わず引いてしまうほどパワフルなのが特徴です。


この曲が注目されるようになったのは、女子高生が去年11月にユーチューブにアップロードしたカバーダンスの画像(25秒)が大ブレークしたことがきっかけです。肩を強調した大きな肩パットを入れた衣装などのディテールをまねしているのも笑いを誘うポイントです。KPOPの現状を統計化し分析しているKPOPレーダーによりますと、ピの場合は視聴回数のほとんどが韓国国内で発生しているのが特徴だといいます。MV再生数のチャートは海外で広く人気を得ているアイドルが上位を占めているのが常で、この現象は極めて異例です。


ピ自身の特徴は野性的な振舞いです。カンのMVでも盛り上がった筋肉を見せつけています。ピだけではありません。今年初めに再ブレイクした曲に、2PMの「My House」があります。2PMは“野獣アイドル”というコピーで、鍛え上げた身体を惜しげもなく見せつけるダンスで人気を得ました。「My House」では、筋肉の露出はないものの“大人の男性”としての魅力を存分に出していて、女性の手を引くようなダンスが印象的です。こうした流れで、これまで主流とされてきた草食系男子の対極にある肉食系男子が、改めて注目されているのです。


この現象は、2000年代に日本で起きた韓流ブームの背景と通じるところがあると分析されています。当時日本では草食系男子が流行っていたのですが、失われた20年と呼ばれる経済低迷のなかで、肉食系男子が多数を占める韓国の芸能人に新鮮な魅力を感じ、勇気づけられたという日本人女性が多くなったのが、韓流ブームにつながったとする見方です。それと同じように、新型コロナウイルスの感染拡大でまだまだ油断のできない状況にある韓国で、「カン」に励まされているという人たち(特に若者たち)が多いのです。


一時、一生懸命だとか熱意というような言葉は気恥ずかしく、格好悪いと思われた時期がありました。ところが最近では「カンでコロナ鬱を吹っ飛ばしている」という人が増えています。ピは芸能活動の面では一時ほどの勢いはなくなっていますが、専属事務所を立ち上げ、財を成していますし、女優のキム・テヒさんと結婚して2女をもうけている、誰もがうらやむスターに違いありません。裕福とは言えない環境で育ちましたが地道な努力でワールドスターとなった、いわば立志伝中の人です。思わず引いてしまうほど熱心に歌い踊るピの姿を見て、「ピほどの人もあんなに一生懸命に生きているんだ。僕(私)も頑張らなくては」と刺激を受ける人が少なくないのです。


大きな成功を掴むよりは、小確幸(「小さいけれども確かな幸せ」という言葉の略語)が注目され共感を得ていましたが、ここにきて、「一生懸命に努力するのは恥ずかしいことではない」という考え方が果たして主流になるのでしょうか。その象徴とも言えるピ、カンの大ブレークで、日の目を見なかった彼の他の歌や映画にも関心が集まっている上、人気バラエティー番組にも出演し、ますます注目されています。ピのこれからの活動から目が離せない理由です。

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