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ライフスタイル

第563話 KPOPアイドルと共に国楽の世界へ

#アジュンマの井戸端会議 l 2020-07-07

玄海灘に立つ虹

ⓒ Big Hit Entertainment

BTSのメンバー、SUGA(シュガ)がAgust Dという名で5月に発表した新曲『大吹打(Daechwita、デチタ)』が世界的に大きな話題となっています。ビルボードが発表した6月6日付のチャートで、シングルチャートの「Hot 100」で76位にランクイン、この曲が収録されたミックステープ(『D‐2』)はメインアルバムチャートの「ビルボード200」で11位を獲得しました。韓国のソロ歌手がこの二つのチャートに同時にランクインしたのは初めてです。5月にユーチューブにアップロードされたMVも現在再生回数1億回を突破しています。 


伝統音楽の『大吹打』に対する関心もそれだけ高まっています。大吹打とは、朝鮮王朝時代に王や高官の公式行事があったときに演奏されていた行進曲の一種で、吹奏楽です。いまでも、海外の要人が韓国を訪問した際に空港や大統領府で行われる歓迎の儀式で、軍楽隊によって演奏されています。いろいろなバージョンがあるのですが、そのなかでも、SUGAの曲には、大吹打芸能保有者のチョン・ジェグク名人が1984年に収録した、国立国楽院の音源が使われています。SUGAは、「大吹打については学校で習った。王様のお出ましの時に使われる軍隊音楽という点がARMY(アーミー。ファンの名称)とよく合っていると思った。複数の音源の中でも国立国楽院の1984年のバージョンが一番かっこよかった」と話しています。


1984年の大吹打の画像は4年前にアップロードされたものですが、ここにきて再生回数が急増したことから、国立国楽院は画像のタイトルを英語に直し、英語の字幕を入れるなど速やかに対応しました。コメント欄には、この曲を通じて韓国の伝統音楽、国楽を知ったという反応が少なくありません。国立国楽院のキム・ヒソン国楽研究室長は「大吹打の歴史や内容についての問いや音源をダウンロードしたいという要請がユーチューブなど多様なルートから届いている」と話します。 


これまで国楽と大衆音楽のクロスオーバーがまったくなかったわけではありません。大衆的に成功した初めての事例としては、1993年、ソテジワアイドゥルの『何如歌(ハヨガ)』が挙げられます。ラップとヒップホップ、エレキギターと韓国の伝統楽器の太平簫(テピョンソ)のメロディをアレンジしました。BTSもまた、『IDOL』(2018)で、「トンギドックンドロロ~」や「オルスッ!」など、国楽のリズムや掛け声を入れています。しかしこれまでの事例はいずれも国楽をモチーフの一つとして使っているに過ぎません。それが『大吹打』では、曲全体のメインテーマとして国楽を掲げています。国楽を前面に押し出した楽曲で、大衆的に成功した事例として大きな意味があると言えます。 


国楽界はこうした動きを歓迎する雰囲気です。国立国楽院のキム室長は、「大衆文化の力を見せつけた良い例」だとしたうえで、「国楽的な色合いに現代的な感性を重ねたがゆえに、この曲が国楽に対する関心へとつながる橋渡しの役目ができたのだろう」と話しています。


国楽の人気と共に韓国の伝統衣装、韓服も注目されています。BTSのメンバーは生活韓服と呼ばれるラフな韓服を愛用している姿を見せていますが、大吹打のMVでも、韓服を着て剣舞を踊るSUGAの姿が見られます。他にも女性アイドルグループのBLACKPINKが、先月、新曲の『How You Like That』をアメリカNBCのトークショー「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」で披露したときも、メンバーの韓服姿が話題を呼びました。


国楽が世界で関心を集めていることについて、キム室長は、「国楽は韓国でも学校で習うだけで、一般的になじまないコンテンツ」だとした上で、「だからこそ大衆文化とのコラボが新鮮で、特に韓国の伝統文化になじみのない世界の舞台で、韓国独特のカラーとして歓迎されているのではないか」と話します。大衆文化評論家のキム・ホンシクさんは、「ほかのジャンルとのコラボが珍しくない今の世代にとって、国楽は古いものではなく、ヒップ(流行の先端)なものとして受け止められるのだろう」として、「海外でも、KPOPがブームになっているため、そのルーツである国楽にも注目が集まっているのではないか」と話しています。

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