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ライフスタイル

第579話 「ドラマや映画ではなぜ誰もマスクをしていないのか」について

#アジュンマの井戸端会議 l 2020-10-27

玄海灘に立つ虹

ⓒ Getty Images Bank

新型コロナウイルスの感染が本格的に広がりを見せたのは、韓国では旧正月以降で、9ヶ月ほど経っています。マスク着用が日常となって久しいのですが、にもかかわらず、ドラマや映画では、誰もマスクを着けていません。ドラマや映画でマスクを着けていない理由について分析した朝鮮日報の興味深い記事があったので、その内容をご紹介します。


まず、ドラマにマスクを着けている人が登場しない理由について、MBCのキム・デジンPDは、「週52時間という労働時間の規定によって、ドラマの多くは事前制作(時間の余裕をもって制作すること)になっているため、現実を反映する上でどうしても時差ができ、コロナがいつ収まるかわからない状況で安易にマスクを着けられない」と話しています。また最近の韓国ドラマは「輸出され、ネットフリックスでも放送されている環境で、韓国だけが俳優たちにマスクを着けてドラマを制作するのは難しい」ということです。コロナの状況を反映させて撮影したドラマが、もしコロナが終わった後に放送されることになったらそれもなんともおかしな状況だというのです。


それにドラマはもともと、現実と違った世界を見せたいという願いが強いものです。TV朝鮮のチョン・ソギョンPDは、「ドラマはある意味現実逃避の側面があるため、人々が見たがらない現実をドラマに反映しても、得るところより失うもののほうが大きいのではないか」と話します。つまり、結局は収益性の問題だというのです。


何より、俳優がマスクを着けると、セリフがうまく伝わりにくいという点もあります。撮影には通常、指向性マイクが使われるのですが、このマイクは特定の方向からくる音だけをキャッチし、一番大きな音を拾います。マスクを着けてセリフを言うと、明確に聞こえてこない可能性があります。 


ただ、韓国では月曜日から金曜日まで毎日放送される「日々ドラマ」があります。いくらある程度余裕をもって制作するといってもそういったドラマなら、現実を反映させることもできるのではないか、また現実に密着したストーリーが展開されるドラマなどでも、俳優がマスクを着けたほうがむしろ現実味が出るのではないかと考える視聴者も少なくないでしょう。室内撮影の場合は演技やセリフのデリバリーに支障が出るので仕方ないとしても、屋外の撮影で、通行人などエキストラの人たちにはマスクを着けてもらったらどうかと思うわけです。このことについて、キム・デジンPDは、「あるドラマで、エキストラの人たちにだけマスクを着けてもらい、そうして撮影したものをモニタリングしたところ、思ったより奇怪で異様だったので、その撮影分はなかったことになったと聞いた」と話します。


ドラマや映画の台本は、だいたい数年間寝かせたものが多いそうです。ドラマ制作会社の関係者は、「感染症を素材にしたドラマならいざ知らず、まだコロナが現在進行中の状況で、俳優のマスク着用を判断するのは敏感な問題」だとした上で、「現場で大変な思いをしている医療スタッフの物語は、コロナが完全に終わって初めて制作が可能になるだろう」と話します。つまり、「あのときはそうだったね」と笑って話せる日が来ないことには、今の状況を反映させるのは難しいというのです。


アメリカの大人気アクションドラマシリーズの『S.W.A.T』では、最近、大規模なアクションシーンを見るのが難しくなっています。また濃厚接触を余儀なくされるベッドシーンもなくなっています。コロナがドラマのシーンにも影響を与えている一例です。そんなこんな理由から、来年もドラマや映画では、マスクを着けている人を見るのは難しいのではないかとみられています。「マスクを着けてコロナと闘うヒーローは、『応答せよ2020』のようなドラマがあとでつくられないことには見ることができないだろう」業界の専門家たちはこう口を揃えています。

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