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ライフスタイル

ヌリ号の主人公たち

#マル秘社会面 l 2021-10-27

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

21日に行われた初の純国産ロケット「ヌリ号」の打ち上げは衛星の軌道投入には失敗しましたが、韓国の宇宙産業にとっては大きな一歩だと言えます。そしてその主人公たちは、打ち上げ当日に現地を訪れマイクの前で演説した大統領ではなく、その後ろに立っていた多くの科学者、エンジニアたちです。

ヌリ号の打ち上げプロジェクトには、この11年7カ月の間に、韓国航空宇宙研究院と国内企業300社のエンジニアが参加してきました。その開発の主役の皆さんの声をお届けしようと思います。

まず 韓国航空宇宙研究院のコ・ジョンファン韓国型発射体開発事業本部長は2010年からヌリ号の開発研究を率いてきた人物で、韓国のロケット開発の生き証人です。

2000年に韓国初の液体燃料ロケットである「科学ロケット(KSR)3号」を開発したのをはじめ、ロシアとの羅老(ナロ)号の共同開発、今回のヌリ号まで20年以上にわたりロケット研究に携わってきました。特に羅老号開発当時は、共同開発をしていたロシアのエンジニアが落としていった紙を拾って翻訳したり、捨てられた油を分析したりして、何とかロシアの技術を取得しようとしました。

ヌリ号に搭載された部品37万個のうち、圧力センサー、温度センサーのように既製品を使用できるものをのぞいた94.1%が国産で、コ・ジョンファン本部長はそのすべての開発、生産にかかわってきました。

ロケットの心臓であるエンジン。キム・ジンハン発射体エンジン開発団長は、ヌリ号開発で最大の難関だった液体燃料ロケットの商用化を指揮した人物です。キム団長は羅老号事業からロケットエンジンの開発に加わり、2018年には75トンエンジンの試験用ロケット発射に成功しました。世界で7番目の成果でした。

ヌリ号の動力となる75トンエンジンの開発は何度も壁に突き当たりました。地上での燃焼試験で設備が爆発して故障したり、エンジンも燃焼が不安定で何度も爆発したりしました。結局20回以上エンジンの設計を変更し、184回、1万8290秒の燃焼試験を行い、エンジンの完成度を高めました。

キム団長は「羅老号事業の当時は『韓国がロケットを作るって本当か』と無視していたロシアの研究陣が液体燃料の商用化以降、共同開発を提案してくるほど今では韓国の技術力が認められています」と語ります。

ヌリ号の開発には韓国企業300社のエンジニア500人余りが参加しました。韓国航空宇宙産業(KAI)が組み立てを統括し、ハンファエアロスペースがロケットエンジン、斗源重工業がタンクと胴体の開発に加わるなど大企業と中小企業が手を組んで行いました。 総事業費の約80%(1兆5000億ウォン=1450億円)が韓国産業界への発注に充てられ、韓国企業が宇宙産業分野で成長する足掛かりを築いたと言えます。

燃料タンクの開発も、各国とも秘密としている技術なので、国産化するために素材から開発しました。韓国航空宇宙研究院でタンク開発を担当したイ・サンフンさんは「外から見ると小さなタンク一つ作るのに何でそんなに時間がかかるんだと思われるかもしれませんが、ロケットには薄いアルミニウムを変形なく、欠陥無しに作る技術が集約しています」と苦労を語ります。

発射台は現代重工業が主軸となって作られました。 現代重工業が製作した発射台は冷却水供給量がロシアの技術で製作された羅老号の発射台の2倍、推進剤は3倍の規模です。

カン・ソンイル発射台チーム長は「発射台の開発に加わった提携企業が途中で倒産し、開発していた設備を徹夜で移転して作業を行う、そんなことを繰り返しました」と苦労を振り返ります。

今回のヌリ号の打ち上げ、一番歓迎すべきことは、打ち上げのニュースが伝わった後、書店で宇宙関係の書籍を買い求める、大人や子供が増えたということです。これが科学の発達の基礎になるのだと思います。

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