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ライフスタイル

絵本「ぼくがきれいだって?」

#ソウル・暮らしのおと l 2023-03-03

金曜ステーション

ⓒ 出版社-springsunshine/僕がきれいだって?

今日は、ある春の日に教室で起きた小さな出来事を描いた絵本を紹介します。タイトルは『ぼくがきれいだって?(내가 예쁘다고?)』。小学校2、3年生くらいの、いがぐり坊主の男の子が主人公のかわいらしいお話です。


ⓒ 出版社-springsunshine/僕がきれいだって?

ある日、男の子は教室で、隣の席のキョンヒが男の子に向かって 「すごく、きれい」と小さな声でつぶやくのを聞き、びっくりします。「ぼくがきれいだって? それってどういうことだろう?」男の子は心の中で考え続けます。キョンヒはぼくのこと好きなのかな? でも色鉛筆を貸してっていってもイヤっていうし、好きなわけないよな。ってことは、やっぱりぼくのことをきれいって言ったのかな。


男の子はその日、ごはんを食べているときも、遊んでいるときも、一日中そのことばについて考えます。鏡をじっと見ては、「よくみると鼻も高いし、目もきらきらしてるし、おばあちゃんがいつもお前はハンサムだって言うもんな」とひとり納得してみたり。でも、きれいっていうのは、どういう意味だろう?なんだかとても変な気分がします。


サッカーを終えて、迎えにきたおばあちゃんと一緒に帰りながら、空を見上げました。「夕焼けがきれいだねえ」とおばあちゃんが言います。心がくすぐったくなって、でも、きれいというのは気持ちがうきうきすることなんだ、と男の子は考えます。


ⓒ 出版社-springsunshine/僕がきれいだって?

次の日、男の子は初めて自分からキョンヒに挨拶しようと心に決めて登校しました。ところが、教室に入ると、キョンヒは友達のミジュとこんなふうにお喋りしていました。「すごくきれいだね、桜」「でしょ?この席からきれいに桜が見えるんだよ」って…。


男の子は真っ赤になって教室を飛び出しました。ぼくのことじゃなかった。桜がきれいだって言ったんだ。恥ずかしくって、そしてなんだか悲しくなって、教室にも戻れず外に飛び出します。そこで見たのは、満開の桜の木。ちいさなかわいいピンクの桜がいっぱい咲いていました。桜は本当にきれいでした。男の子は、ちょっと気分が良くなりました。その時、きれいなものを見ると気分がよくなるということを、初めて知ったのでした。


…という、こんなお話です。


隣りの席の女の子の「きれい」という一言に反応して、男の子がどきどきしたり、ヘンな気持ちになったりする、そんな様子がとても愛らしく描かれています。結局はかん違いでしたが、男の子が自分にむかって言われたと思った聞き慣れない「きれい」ということばを一生懸命に解釈しようとする姿がとても面白いのです。


でも考えてみたら私たちは、男の子のほめ言葉は「かっこいい」、女の子のほめ言葉は「かわいい」という固定観念が植え付けられているのかもしれませんね。


男の子は最後に満開の桜を見て、きれいということばの意味を身体で感じたことでしょう。その感情は男の子を少しだけ、大人にしてくれたのではないでしょうか。


著者のファン・インチャンさんは詩人で、この本がはじめての絵本作品だそうです。ここに画家のイ・ミョンエさんのやさしいパステルカラーの挿絵が、ほっこりするお話を彩ってくれています。

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