きょうご紹介する絵本は、夏の訪れにぴったりの、さわやかなお話。「おばあちゃんの夏休み(할머니의 여름휴가)」という絵本です。さっそく本を開いてみましょう。
ⓒ Changbi Publishers「おや、強風のボタンが効かなくなってしまったねえ」
あつい夏の日、おばあさんは居間で犬のメリと一緒に、扇風機の弱い風にあたっていました。そこへ、
「ピンポン、ピンポン」
「おばあちゃん、ぼくだよ!」
海に行ってきた孫が遊びにきたのです。真っ黒に日焼けした孫は、おばあさんにサザエの貝殻をお土産にくれました。「ほら、耳につけると波の音が聞こえるでしょ?暑いときに聞くと、涼しくなるよ」
ⓒ Changbi Publishers孫たちが帰ったあと、不思議なことが起こります。 サザエの貝殻から小さなカニがひょっこり現れ、そのカニを追いかけていたメリが、スポッと貝殻に吸い込まれてしまったのです。
あれ?とおばあさんが見ている前で、何事もなかったかのように貝殻からまたメリがにゅっと飛び出しました。貝殻から出てきたメリの体から、海のにおいがしました。
ⓒ Changbi Publishersそこでおばあさんは、水着と、日傘と、ビーチマットと、半分に切ったスイカをもって、メリと一緒に貝殻のなかに入っていきました。そこには大きな海と砂浜が広がっていました。
おばあさんは水遊びをし、スイカを食べ、砂浜に寝そべって肌を焼き、涼しい海風にあたりました。
ⓒ Changbi Publishersヤドカリを追いかけるメリについていくと、海の上にお土産屋さんがありました。そこには 動く波の絵や、クラゲの風鈴など、いろんな素敵なお土産が売られていました。 おばあさんは、「海風スイッチ」と書かれた貝の形のスイッチをひとつ買うことにしました。
「さて、そろそろ帰ろうか」
メリと一緒に部屋に帰ってきたおばあさんは、さっそく、扇風機の壊れたボタンに海風スイッチをはめ込みました。ブウゥゥン…と、扇風機は勢いよく回りはじめました。
「ああほんとうに、海風みたいに涼しいねえ」。
ワンワン、とメリも答えました。
ⓒ Changbi Publishersこんなお話でした。夏休みの海辺というと、子どもや若者が主人公に思われますが、おばあちゃんだってこんなに楽しめるのです。もしかしたら現実の世界では、膝が痛いとか、高齢者には危ないとかで、海遊びを遠慮してしまったかもしれません。ところが貝殻の中の冒険には躊躇なく飛び込んで、のんびりと海を楽しんできたおばあちゃんが、とってもキュートですてきでした。
この絵本は、「すいかのプール」という大人気の絵本の作者、アンニョン・タルさんが2016年に出版した作品です。すいかのプールと同じく夏をテーマに、夢のあふれるファンタジーを優しいタッチで描いています。絵本を開くだけで涼しい海風を感じるような、そんな一冊でした。