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ピープル

小説家、ユン・イス

2016-12-20

今年の8月から10月にかけて放送されたKBSドラマ「雲が描いた月明かり」は、朝鮮王朝の王子、イ・ヨンと宦官になりすまして王宮に入った少女、ホン・ラオンが繰り広げるハプニングと二人の恋を描き、20パーセントを越える高い視聴率を記録しました。ドラマ「雲が描いた月明かり」の原作は同名のネット小説です。2013年から2年間、あるポータルサイトに掲載されていたネット小説「雲が描いた月明かり」は、累積アクセス数5千万を越え、圧倒的な1位を記録し、ドラマ化が決定しました。

ネット小説「雲が描いた月明かり」を書いたのは今年41歳になった小説家、ユン・イスさんです。ユン・イスさんは子供の頃から本を読むのが好きで、本を読み終えた後はその余韻にひたって終わったはずの小説の続きを想像し、絵に描いたり、小説を書いたりしていました。趣味を活かして大学でも文芸学を専攻したいと思いましたが、将来性がないと反対され、文学とは関係のない学科に進み、卒業後は公務員になりました。小説家やシナリオ作家になりたかったユン・イスさんでしたが、大学も職業も親が決めたようなもので、楽しいはずがありません。結局、職場に辞表を出し、目標を失ったまま過ごしていた1997年のある日、ユン・イスさんはヨーロッパへ行こうと決心します。手持ちのお金は100万ウォンだけで、アルバイトをしながらユン・イスさんはイギリス、フランス、ドイツなどの国を回ります。ヨーロッパでの経験は、彼女の想像力をより豊かにしていきました。



ヨーロッパでの生活が長くなると、ふと韓国が恋しくなったユン・イスさん。寂しさを紛らわすため、小説を書きはじめました。小説を読んでくれた人たちから届く応援のメッセージ、韓国語でのコミュニケーションはホームシックになっていた彼女に大きな励みになりました。働きながらヨーロッパを旅する傍ら、ネット小説を書きつつ10年を送ったユン・イスさんは韓国に戻り、2006年、最初の時代劇ラブロマンス「ソルファ」を発表します。中国の清の皇太子に嫁入りした朝鮮王朝の姫の話でした。歴史に興味を持っていたユン・イスさんは歴史的な人物や出来事にフィクションを加味した小説を書き続けます。そして、2011年、「雲が描いた月明かり」の主人公、イ・ヨンとホン・ラオンの恋物語を企画することになったのです。

孝明世子(ヒョミョン・セジャ)=イ・ヨンは、1809年8月9日、朝鮮王朝23代目の王、純祖(スンジョ)の長男として生まれました。父王、純祖が健康を害したため、18歳の孝明世子は摂政に任ぜられます。摂政となった孝明世子は、当時、大きな権力を振るっていた貴族を抑え、王権を回復するために努めました。しかし、その夢を実現できないまま、21歳の時に亡くなってしまいます。ユン・イスさんはそんな孝明世子を小説の中で復活させたのです。2年あまりの資料調査と企画を経て、2013年、「雲が描いた月明かり」の連載が決まります。実在の人物と架空の人物の絶妙なバランスと興味深いストーリー、繊細な演出はネットユーザーの関心を引き、「雲が描いた月明かり」は連載4ヶ月めから連載が終わるまでネット小説部門1位を逃しませんでした。

ユン・イスさんの作品の主人公を見ると実在した人物で、その多くが悲運に見舞われた人物です。そんな人物がユン・イスさんの小説の中で復活し、幸せな顔でハッピーエンドを迎えるのです。人生にはさまざまな悩みや悲しみがありますが、小説の世界でだけは幸せになってほしい、本を読む読者に温もりを伝えていきたいと思うからです。ユン・イスさんが歴史的な出来事や人物をモチーフにした作品を書いているのにも理由があります。若い読者に歴史に関心を持ってほしいからです。ユン・イスさんの小説はフィクションですが、「雲が描いた月明かり」を通して歴史的な人物や小説の背景となった事件などについて感心を持つきっかけにしたいと考えたのです。

悲劇的な歴史と人物を小説の世界に呼び出し、幸せにしたいと願う小説家、ユン・イスさん。そんなユン・イスさんの作品の魅力が読書と歴史から遠ざかっていた若者たちを呼び集めています。

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