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ピープル

オルガン製作マイスター、ホン・ソンフン

2017-02-21

ソウルの近郊、京畿道(キョンギド)楊平(ヤンピョン)にある菊秀(ククス)教会。この教会に設置されたパイプオルガンはその音質はもちろん、デザインと設計が独特で、パイプオルガンの演奏会もたびたび行われています。パイプオルガンを演奏する機会が少ない韓国では、菊秀教会はオルガニストにとって夢の舞台となっているのです。

韓国的な情緒が感じられる菊秀教会のパイプオルガンを作ったのは、オルガン製作マイスター、ホン・ソンフンさんです。彼は韓国に一人しかいないオルゲルバウマイスターです。パイプオルガンの大きさは数メートルから数十メートルに達し、重さも1トンを越えるため、専門家の間では「作る」とはいわず、建築物のように「建てる、設立する」と表現します。オルゲルバウとは、ドイツ語で「オルガン建築」という意味です。ホン・ソンフンさんの作業室も揚平(ヤンピョン)にあります。天井の高さが10メートルの作業室で、パイプや木を裁断してパイプオルガンを製作していきます。ホン・ソンフンさんが韓国に作業室を構えて本格的にパイプオルガンを作り始めたのは、今から16年前のことでした。ソウル市立歌舞団の団員だったホン・ソンフンさんはどのようにしてオルガン職人になったのでしょうか。



1984年、大学を卒業したホン・ソンフンさんは韓国唯一のミュージカル劇団、ソウル市立歌舞団に入団しました。彼は大学で舞踊を専攻し、演技にもそれなりに自信を持っていたのですが、歌舞団の先輩たちの演技を見て実力の差を実感しました。彼は将来のための決断を下すべきだと思い、劇団を出てドイツへの留学を決行しました。考えをまとめるためにドイツへ向かった28歳のホン・ソンフンさんは、クラシックギターを習おうとしました。ところがドイツで出会った先輩の留学生がパイプオルガンに興味を持っていたようで、ホン・ソンフンさんにもパイプオルガンの製作を学んでみるよう勧めました。時間が経つうちに、ホン・ソンフンさんはパイプオルガンについて興味を持つようになりました。パイプオルガンは機械的装置を使って音楽を作り出す楽器で、これが自分の進むべき道なのかも知れないと考えるようになったのです。

ホン・ソンフンさんはマイスターの許可を得て、マイスター課程を目指し、見習いとしてパイプオルガンの世界に入門しました。ドイツのパイプオルガン製作の伝統を守り、オルガン製作専門家=オルゲルバウマイスターを養成していくため、国の管理の下でオルガン製作教育を進めます。オルガン製作課程に必要な経費も国が支援するため、見習い課程も面接試験を通過しなければなりませんでした。面接を通過し、見習いとしてパイプオルガン製作を学びはじめたホン・ソンフンさんは入門4年目に職人資格試験=オルゲルバウ国家試験に合格しました。親方にあたるマイスターを目指せる資格を得たのです。その後、ホン・ソンフンさんは徒弟制度により、世界最高のパイプオルガン製作会社の一つ、ヨハネス・クライスの門下生となり、文化財級の大聖堂でパイプオルガンを建てたり、修理したり、復元したりしながら、オルガンの構造や建築のノウハウだけでなく、オルゲルバウマイスターの役割について学びました。



オルゲルバウマイスターの資格を取得したホン・ソンフンさんは1997年、10年ぶりに帰国します。しかし、当時の韓国は深刻な通貨危機に見舞われていました。経済的にも精神的にも苦しい時期でした。帰国から4年が経った2001年、ソウルの奉天洞(ポンチョンドン)教会からパイプオルガンを作ってほしいという依頼がありました。韓国に一人しかいないオルゲルバウマイスターとして、ホン・ソンフンさんはパイプオルガンに韓国の情緒を融合させたいと思いました。彼は、韓国の伝統的な米櫃(こめびつ)を利用した移動式のオルガンをはじめ、韓国の自然、山水画を描き込み、パイプの隣に揚平(ヤンピョン)でよく見られる鳥、カッコウをあしらい、春の生命力を表現するため、黄綠色の照明を設置したオルガンなどを作っていきました。この山水画のオルガンは冒頭にご紹介した菊秀教会に設置されました。菊秀教会では、毎年、オルゲル・フェスティバルが開かれています。

これまで16台のオルガンを製作しているホン・ソンフンさん。最近、彼の興味を引いているのは、朝鮮時代の屏風に見られる「日月五峰図(イルウォルオボンド)」です。韓国の情緒を溶け込ませたパイプオルガンを作りたいと願うホン・ソンフンさんは王の権威と太平の世を象徴する「日月五峰図」をあしらったパイプオルガンを作り、そしてそのオルガンから韓国の笛の音が聞こえるように工夫したいと考えています。彼はパイプオルガンが韓国の楽器の一つとして受け入れられ、韓国の文化として根を下ろせる日を目指して努力しているのです。


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