韓国は1997年以降この25年間、死刑を一度も執行していない、いわゆる「実質的死刑廃止国」ですが、死刑制度を定めている現行の法律は憲法に違反していると訴えた違憲訴訟の公開弁論を控えて、法務部は「死刑制度は合憲だ」とする趣意書を憲法裁判所に提出しました。
法曹関係者が29日、明らかにしたところによりますと、法務部は来月14日に開かれる公開弁論を控えて、今月16日、死刑制度が憲法に合致するという内容の弁論趣意書を憲法裁判所に提出しました。
法務部は、「アメリカや日本などの先進国も死刑制度をそのまま維持している。死刑制度を存置しているからといって、その国が発展の遅れた野蛮な国だとはみなせない」として、死刑制度の廃止が先進国の条件ではないという見解を明確にしました。
また死刑制度の廃止を加盟の条件にしているEU=ヨーロッパ連合に比較的最近、加盟した国は、国民意識の変化よりも、国益を考えた経済的理由から死刑制度の廃止を決めたと主張しました。
さらに法務部は、2021年に行われた世論調査の結果、「死刑制度を維持しなければならない」という回答が77.3%に上ったとして、国民の要望、時代的な状況や雰囲気を無視することはできないと強調しました。
法務部は「死刑は野蛮な復讐ではなく、むしろ正義にかなう」として、死刑に代わる刑罰としてよく挙げられる『仮釈放なしの終身刑』についても反対しました。
憲法裁判所は1996年と2010年に死刑制度が憲法に合致するという決定を下しています。
しかし、時間が経つにつれ、死刑制度は違憲だという見解を示す裁判官が増えていて、人権団体や宗教界などは今回の裁判の結果に期待を示しています。
憲法違反という決定が下されるとしても、それにかわる刑罰は何かをめぐって法律論争が起こる可能性があります。