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金正男氏殺害事件 

今週のキーワード2017-02-19
金正男氏殺害事件 

北韓の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の兄、金正男(キム・ジョンナム)氏が、マレーシアの空港で殺害されたとされる事件で、マレーシア警察は19日午後、事件発生後、初めてとなる記者会見を開き、「容疑者全員が北韓国籍だ」と述べ、北韓が関与した可能性を示唆しました。
この事件は、マレーシアのクアラルンプール国際空港で今月13日、金正恩労働党委員長の兄、金正男氏が空港内のサービスカウンターで「顔に液体をかけられた」と体調不良を訴え、病院へ搬送される途中で死亡し、マレーシア警察が殺人事件として捜査しています。
空港の監視カメラを分析したところ、自動チェックインカウンターの近くに立っていた金正男氏に女2人が近づき、そのうち1人が金正男氏の顔にスプレーをふきかけ、もう1人がハンカチのような布で金正男氏の口を覆いました。二人は10秒ほど後にその場を去り、タクシーで逃走したということです。
マレーシア警察によりますと、殺害された男は北韓国籍の「キム・チョル」(46)であり、家族のDNAサンプル提供後に身元確認が可能だとして、現段階では金正男(キム・ジョンナム)氏と断定することはできないとする立場を示しました。
また、死因については、遺体の司法解剖を15日と18日に2回行ったものの、特定できなかったとしています。
さらに、実行犯の女2人以外に、事件に関与した北韓国籍の容疑者は全部で5人、このうち17日に逮捕したリ・ジョンチョル容疑者(47)以外は全員、事件当日にマレーシアを出国したことが確認されたということです。
警察当局は、容疑者4人の出国先については言及せず、4人の行方を追っていることを明らかにしました。
逮捕されたリ・ジョンチョル容疑者は、去年8月6日にマレーシアに入国し、IT企業で社員として働いているということです。
現地のメディアは、リ容疑者が、北韓の大学で化学や医学を学んだあと、2010年頃にインドのコルカタで研究に携わっていた経験もあり、薬品や毒物に精通していた可能性が高いとしています。
このためマレーシア警察がリ容疑者を北韓軍の対外工作機関の「偵察総局」に所属していた可能性があるとみて調べていると伝えています。
金正男氏は故金正日国防委員長の長男で、金正恩労働党委員長にとって母親の違う兄です。
金正男氏の母は故金正日国防委員長の最初の妻の成蕙琳(ソン・ヘリム )氏です。
金正男氏は1971年5月10日に平壌で生まれ、スイスのジュネーヴや旧ソビエト連邦のモスクワに留学したことがあります。
1995年からは中国の北京で暮らし始め、上海の経済発展ぶりなどに接し、北韓の改革開放を志すようになったと伝えられています。
祖父の故金日成主席や父の故金正日国防委員長から愛され、後継者として注目されましたが、2001年5月に偽造パスポートで日本に不法入国しようとして東京入国管理局成田空港支局に拘束される事件が発生、この事件を契機に故金正日国防委員長から見放され、海外を転々とする生活をしていました。
叔父の張成沢氏が後見人とされていましたが、張成沢氏が粛清、処刑されたあと、生活は不安定だったということです。
事件について、韓国の情報機関は、北韓の工作機関が金正男氏を毒殺したとの見方を示しています。かつて、正男氏が「3代世襲には反対だ」と語ったことがメディアで報じられ、金正恩労働党委員長は正男氏を体制の潜在的脅威とみなし、除去を図ったのではないかということです。
金正恩労働党委員長は3人目の妻の高英姫から生まれた三男ということもあり、権力基盤をさらに強固にするために直系の長男である金正南氏の殺害を指示したとの見方もあります。
この事件の経緯はまだナゾに包まれた部分が多く、マレーシア当局は徹底した捜査を続けるとしています。


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