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金正恩委員長に賠償命令

今週のキーワード2020-07-11

ⓒYONHAP News

ソウル中央地方裁判所はこのほど、北韓の金正恩国務委員長に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。

韓国戦争当時、北韓の捕虜となった元韓国軍男性2人が「休戦協定締結後も韓国に送還せず、北韓内務省建設隊に配属し強制労働をさせたのは明白な国際法違反だ」として、2016年10月に北韓と金正恩委員長を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしました。

この2人は 、2000年と2001年にそれぞれ北韓から脱出、韓国に戻ることができました。

原告側は、「休戦協定締結後も韓国側に送還されず50年近く捕虜として北韓に抑留され、強制労働させられたことで基本的人権が抹殺された」と主張、北韓と金正恩委員長を相手取って、損害賠償と慰謝料を請求しました。

ソウル中央地方裁判所は7日、原告側の主張を一部認め、1人当たり2246万ウォン、およそ190万円を支払うよう命じる判決を言い渡しました。

韓国の裁判所が北韓や金正恩委員長に賠償命令をしたのは初めてです。

一審判決が出るまで3年余りかかったのは、訴状を北韓側に伝える方法が事実上なかったためです。

裁判所は去年5月にホームページなどに訴状を掲示し、一定期間が過ぎれば関連書類が届いたとみなす「公示送達」を適用し、去年6月にようやく審理を開始しました。

公示送達の手続きを経ると、原告側が提出した証拠だけで審理を進めることができます。

国際法は、国家やそれに類する存在は他国の裁判権に服さないとの「主権免除」原則がありますが、原告側は「韓国の憲法は北韓を韓国の領土とみなしており、主権免除は適用されない」と主張、裁判所はこうした主張を受け入れました。

初めて北韓や金正恩委員長に賠償を命じる判決が言い渡されましたが、北韓側が韓国の裁判所の命令に従うとは考えられません。

そこで原告側は、南北経済文化協力財団の資産の差し押さえを申請、強制執行手続きを踏むとみられています。

2004年1月に南北間の民間交流のために設立された南北経済文化協力財団は、北韓の国営朝鮮中央テレビの映像を使用する際の著作権料を北韓側に支払う業務も担当しています。

2008年以降、北韓に対する制裁で著作権料は支払われておらず、南北経済文化協力財団は北韓側に支払う著作権料を裁判所に供託しています。

供託金は20億ウォン余りに上るとされ、原告側はこの供託金の差し押えを申請するものとみられます。

停戦協定締結後も北韓に抑留されていた元韓国軍捕虜は複数確認されていて、今回の判決を受けて、同様の訴訟が相次ぐのではないかとする見方もあります。

また、北韓が最近爆破した南北共同連絡事務所についても、損害賠償を請求できるとの見方もあり、北韓を相手にした裁判闘争が続く可能性も出てきています。

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