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緊張緩和と経済への波及効果

今週のキーワード2018-06-17
緊張緩和と経済への波及効果

史上初の米朝首脳会談が12日、シンガポールのセントーサ島で行われ、アメリカのトランプ大統領と北韓の金正恩国務委員長は会談の成果をまとめた合意文書に署名しました。
合意文書は、北韓が韓半島を完全に非核化するために取り組むとした4月27日の板門店宣言を再確認するとしたうえで、韓半島に永続的で安定的な平和体制を構築するためにともに努力するとしています。
アメリカが求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」と北韓が要求しているアメリカによる体制保証をどういった形で進めていくかについては明記されず、具体性に欠けるとの指摘もありますが、北韓が完全な非核化に取り組むことを約束したことで、韓半島情勢は緊張緩和に向けた大きな転換点を迎えました。
韓国の経済団体は米朝首脳会談の結果について歓迎し、今後の南北経済協力に期待を示しました。
大韓商工会議所は、南北関係改善に向けた努力を積極的に支援し、南北間の新たな経済協力に向けて準備を進めていくとしました。
韓国経営者総協会は、韓半島の恒久的な平和定着に向けた道が開かれたとして、地政学的リスクが減少することで消費および投資が改善するだけでなく、周辺国との経済協力が活性化することで南北だけでなく北東アジア地域全体の経済に活気を吹き込むことになるだろうと期待を示しました。
また、全国経済人連合会は、近い時期に平和と繁栄、希望の時代が開かれることを期待するとしたうえで、非核化に向けた後続措置が順調に進むよう協力していきたいとしました。
北韓をめぐる地政学的リスクは経済成長を制限する阻害要因の一つでした。
北韓の非核化が進めば地政学的リスクは顕著に緩和され、消費と投資が促進されるなど、経済全般にプラスの効果を及ぼすことが期待されます。
もちろんそこには北韓の非核化と北韓に対する経済制裁の解除という大きな前提があります。
合意文書には経済に関する内容は含まれませんでした。
トランプ大統領と金正恩委員長も経済協力については一切言及していません。
まずは非核化が重要な課題であり、少なくとも現段階で経済協力に言及するのは適切でないとの判断があったとみられます。
アメリカと北韓は今後、非核化の実現に向けて話し合いを続けていくでしょう。
トランプ大統領は合意文書の署名式で、「非核化のプロセスはとても迅速に始まる」と述べました。
アメリカが求める北韓の非核化が進めば、ある時点で制裁緩和や経済協力も取り上げられることになるものとみられます。
一方で経済効果は制限的だとする慎重論もあります。
過去の例からも分かるように、北韓は予期できない部分も大きいだけに安定的な投資先とは言えません。
また、南北間の経済格差が大きく、北韓に対する制裁が緩和されるとしても、北韓に進出、または投資する企業がどれくらいあるかは疑問だとする声もあります。

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