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第605話 女性のドラマ演出家の活躍が目立っています

#アジュンマの井戸端会議 l 2021-05-04

玄海灘に立つ虹


漠然と、男性の演出家ばかりだと考えられていたスリラーなど、いわゆるジャンルものと呼ばれるドラマで、女性の演出家の活躍が目立っています。


ケーブル局のtvNで放送され、5月2日に最終回を迎えたドラマ『ヴィンチェンツォ』は、初回から、ソン・ジュンギ演じる主人公、ヴィンチェンツォがイタリアの葡萄園に火を放つ場面など、大胆な演出でも注目された作品です。軽妙でありながら線が太いドラマですが、演出したのは女性のキム・ヒウォン氏。10年を超えるキャリアを持っています。『カネの花~愛を閉ざした男~』(邦題)(2017~2018、MBC)や『王になった男』(2019、tvN)などで、独特の演出力に定評があります。第7話では、世界的に有名な絵画(ウジェーヌ・ドラクロワ作《民衆を導く自由の女神》(1830、フランス))と再開発に反対し建物を守ろうとする人たちの姿とをオーバーラップさせた演出で注目されました。


今年2月から4月にかけてJTBCで放送された『怪物』も、連続殺人犯を捕まえるために違法行為も厭わない怪物のような男性警察官二人の心理スリラーで、毎回緊迫感あふれる話の連続だったウェルメイドドラマですが、やはり女性の演出者による作品です。ドラマのホームページに設けられた掲示板には「重たい犯罪ものの演出者は男性が多かったので、『怪物』も男性かと思った」という内容の書き込みが複数見られます。『怪物』を演出したシム・ナヨン氏は、2019年『18歳の瞬間』でデビューした新人で、怪物が長編演出2作目です。彼女自身「スリラーというジャンルに対する負担もあったが、うまくできるという自信があった」とインタビューで話しています。


放送通信委員会が刊行した「2020年 放送産業実態調査報告書」によりますと、地上波3社の演出家2,472人のうち、女性は822人(33%)。2000年代初めは女性の演出家は10%余りでしたから、その時と比べると増えています。バラエティー番組では有名になる女性の演出者が多いのですが、ドラマではなかなか頭角を現していないようです。1990年代までに限ると、地上波3社でドラマを演出した女性は、1981年に韓国放送(KBS)に入社した人一人だけでした。文化放送(MBC)では2005年になってようやく、女性が演出した作品が出ました。現在KBSではドラマ演出者の72人中20人が、MBCでは45人中15人が女性で、ケーブルチャンネルなどを合わせるとさらに多いだろうとみられています。


時代が変わり、女性に対する偏見もなくなってきたことで、女性のほうがむしろうまく表現できる感性が認められるようになりました。女性に対する偏見の一つは体力です。長時間の撮影に耐えられる女性はいないだろうという先入観があり、さらに50人から100人に及ぶスタッフを一つに束ねることも女性には難しいのではないかという偏見もあったといいます。今では撮影現場の環境がだいぶ改善されている上、演出者一人の力に依存するのではなく、現場にいる全員が協力し合うことが重要になっているため、女性のコミュニケーション力が現場での作業に大いに役に立つのだという指摘もあります。


また女性のドラマ演出者が演出するジャンルも多様になっています。韓国で初めての女性のドラマ演出者は主に女性に関するストーリーの演出をしていたということですが、それ以降の女性演出者はラブコメディなどメロドラマに集中していました。ところが現在は『怪物』『ヴィンチェンツォ』のような犯罪スリラー、刑事もの、心理スリラーなどヘビーなストーリーのドラマを演出する場合も目に見えて増えています。性別による垣根がなくなっているのです。


ただ、女性演出者としての悩みもあります。シム・ナヨン氏は「結婚や妊娠、育児などとそれによる経歴断絶が悩み」だとした上で、「仕事と家庭のバランスをどう守っていけばいいのか答えを探している」と話しています。

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