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日本文化論『「縮み」志向の日本人』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2022-05-19

玄海灘に立つ虹


本日ご紹介する本は、李御寧先生の日本文化論『「縮み」志向の日本人』です。韓国タイトルはそのまま『축소지향의 일본인』で、私は韓国語で読みましたが、もともと日本語で先に出て、後から韓国語で出ているんですね。日本語版は1982年発売なので、なんと40年前。

李御寧先生は韓国ではもちろん、日本でもよく知られていますが、文芸評論家であり、文化部長官も務めた韓国の代表的な知識人の一人です。今年2月に亡くなったのですが、主な著書として、この『「縮み」志向の日本人』も紹介されていました。とても有名な本なのでタイトルは知っていたんですが、私は訃報の記事を見て、初めて読んでみました。


まず、タイトルが気になりますよね。縮み志向。なんでも縮小したがる、より小さいものを好む、ということですが、様々な切り口で日本人の縮み志向について述べています。

例えば、俳句。五、七、五の中にぎゅっと世界を詰め込むという縮み志向。それは短い言葉で表現するということでもありますが、あいさつがそうですよね。「こんにちは」「こんばんは」なんかは、本当は後ろに何か言葉が続くはずが、今日は、今晩は、というところで切ってしまう。「どうも」なんかもそうです。その後ろに何か続かないと意味をなさないはずなのに、どうもだけで「ありがとう」や「こんにちは」など状況によっていろんな意味で使われますよね。


小さいものを好むというのは、例えば盆栽。ミニチュアのような小さな木を精魂込めて美しく育てる、ザ・日本文化という感じです。言葉の面では、「豆〇〇」という表現。ちょっとした知識のことを豆知識と言ったり、小さな電球を豆電球と言ったりします。韓国では、「小さな」にあたる言葉はあまりなく、「大きな」にあたる言葉は「ワン(왕)〇〇」、ワンは王様の王ですが、왕갈비、왕만두などと言います。日本人からすれば、韓国の人は大きいものが好きだなと思うことが多く、例えば車。軽自動車は日本に比べると圧倒的に少ないです。本も、日本は文庫本という小さな本がありますが、韓国では見かけません。安いし、持ち運びに便利なのですが、やっぱり小さいのは嫌なのかなと思います。


花の好みについても指摘していて、日本は小さな花を好む傾向があって、桜が代表的ですが、スズラン、藤の花のように小さく連なっているような花が昔から好まれる。一方、韓国はムグンファ(ムクゲ)のような大きな花を好む。ということですが、これは40年前とはだいぶ変わっているかもしれないですね。韓国の人も桜が好きですし、日本でもスズランや藤というのはちょっと昔のイメージがあります。


意外だったのは、お弁当。お弁当も縮み志向の例に挙がっています。小さな箱に詰めるということですよね。韓国にも도시락はありますが、日本のお弁当文化ほどは発達していない。本の中では駅弁が紹介されていて、82年に出た本なので、「78年の調査によると」と、出てくるんですが、「駅弁は1800種類ある」と出ています。本当にそんなにあったのか、あるのか、よく分からないですが、確かに駅弁の文化は日本らしい気がします。全国の特産品が食べれて楽しいですが、韓国では駅弁、あまり見かけないですよね?

武田さんもおっしゃってましたけど、日本ではロケではロケ弁が基本なのに対して、韓国ではパプチャが来てご飯を現場で作って食べる、あるいは食堂に行って食べますよね。

これは本に出ていた話ではないですけど、日本でキャラ弁といって、ノリや食材を使ってキャラクターを表現するお弁当。これもとても日本的な気がします。ものすごく細かい作業でかわいく作るんですが、縮み志向そのものですよね。


40年も前の本ですが、今読んでも確かにそうだなという例が多く、普段感じている日韓の違いがより一層はっきり見える気がしました。日本人論、日本文化論というのはたくさんあるんですが、欧米から見るのと、隣の国から見るのはかなり視点が違うというのも感じました。似ているから違いが際立つというのもあると思います。日本人としては当たり前と思っていたことが、隣の国から見るとこう見えるのか、という視点、ぜひ読んでみてほしいなと思います。

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