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文化

エッセイ「疲れたか、好きなことがないか」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-06-26

玄海灘に立つ虹

〇今回は、エッセイ「疲れたか、好きなことがないか」をご紹介。韓国語は「지쳤거나 좋아하는 게 없거나」。まだ日本では翻訳出版されていないようだが、韓国ではベストセラー。


〇まず作者の名前が気になる。クルペウ。文章俳優。もちろん本名ではなく。調べてみると1988年生まれのキム・ドンヒョクさんという男性。SNS上で書いていた文章が人気になって、本を出すようになったそう。


〇タイトルはなんとなく癒し系のにおいがするが、実はそうでもない。クルペウさん自身の経験についても書いているが、なかなかの苦労者。「8ヶ月で8千万ウォンを稼いだこと」という話がある。8ヶ月で8千万ウォンがすごいというよりも、その過程がびっくり。25歳で事業に失敗して3千万ウォンの借金が残り、地元を離れてソウルへ上京。そこで紆余曲折経て、餅売りを始める。毎日毎日同じビルの前で。큰절というお辞儀をして、道行く人に応援の声をかけて、自分の事情を書いたチラシを配って。ほとんど売れないまま8ヶ月。とある社長が一緒に働いてほしいとスカウトしてきたが、他にやりたいことがあると言って断る。その後、大量の餅の注文が入る。8千万ウォン分。その社長だったかもしれない、という話。「あなたも私も花を咲かせられる。あなただけの素敵な人生の時間が詰まった花を」という風にしめくくる。


〇クルペウさん本人の経験から学んだこと、感じたこと、などをつづっている。短いものはとても短くて、例えば「誰かを本気で愛した経験は」というタイトルのあと、「一生の美しい思い出になる」という風に、一文で終わる。


〇私がこの本から学ぶのは、情熱を注いでやった何かは、その時失敗に思えても、必ずしも失敗でない、ということ。クルペウさんの場合は、事業をやる前の夢が、広告会社のコピーライターだった。公募に何度も挑戦するけども落ち続けて、インターネット上に書くようになったのが、本を出すきっかけになった。何度も挑戦する間に、おそらく言葉を考えて考えて考え抜いたはず。その間に言葉のセンスが磨かれた。何もせずに急にインターネットに書いた文章が人気になったわけではない。


〇私が好きな、この本の最後の文章を紹介。「一つの季節が来たら、一つの好きなことを始めよう。あんまり悩まないでください。たった一度の人生。自分が好きなことをたくさんやりながら生きましょう」


〇以前紹介したエッセイ「私は私のままで生きることにした」のキム・スヒョン作家の新しいエッセイ「がんばらないで気楽に(애쓰지 않고 편안하게)」が、韓国の出版史上最高額で日本の出版社と契約を結んだというニュース。日本で韓国の本がよく売れているのがうれしい。まだ翻訳されていないけども、おすすめという本も紹介していきたい。

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