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文化

映画「ユニへ」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-10-30

玄海灘に立つ虹


〇こんにちは、韓国に入国して隔離中の成川です。今回は自宅では隔離ができず、施設隔離になって、今金浦のホテルで缶詰めになってます。

前回は映画「福岡」についてお話しましたが、今回も日本でロケが行われた韓国映画です。イム・デヒョン監督の「ユニへ」という映画ですが、ユニは主人公の名前で、キム・ヒエさんが演じました。ユニの友達が北海道の小樽にいて、ユニと娘が韓国から小樽へ旅行に行くんですが、小樽、といえば岩井俊二監督の「ラブレター」の舞台で、韓国の人に人気のロケ地ですよね。


〇「ユニへ」は、昨年の釜山国際映画祭のクロージング作品で、その後わりとすぐに韓国で劇場公開されました。小樽に住んでいるユニの友達は、中村優子さん演じるジュン。ジュンが昔韓国に住んでいた頃の友達なんですね。ジュンはお母さんが韓国人、お父さんが日本人で、親の離婚をきっかけにお父さんと一緒に日本に来て、それ以来、ユニとジュンは離ればなれになりました。一方、ユニは結婚して娘がいるんですけど、夫とは離婚して娘と二人暮らし。娘が母の過去について気になり始めて、旅行を提案します。


〇小樽も行ったことありますけど、秋に行ったのでその時は雪の小樽は見られず、私は新聞記者時代に富山に2年いて、富山もものすごく雪が降るんですよね。さぞかし富山の人は雪にうんざりなんだろうなと思っていたら、「雪が降ると明るくなるからいい」と言う人がいて、なるほどと思いました。雪が白いので、光を反射して、本当に世界が明るくなるんですよね。「ユニへ」に出てくる小樽の景色もそうでした。雪が積もってるんですけど、温かい雰囲気。母と娘の二人旅、そして久々の再会が温かく祝福されているような、そういう気持ちになりました。


〇ユニとジュンが長く会えなかったのには事情があるんですけど、そこまで話してしまうと、見る楽しみが減ってしまうので、そこは置いておきますね。私が一番好きなシーンは、ユニと娘のセボムが雪だるまを作りながら、少しずつ互いのことを打ち明けて、秘密の多い親子の距離が縮まるところ。とにかく、小樽で撮ったのは、間違いなく雪の存在があると思うんですが、イム・デヒョン監督があるインタビューに答えているのを読むと、小樽を旅行中に、地元のおばあさんが「雪はいつ止むだろう」って言ったそうなんですね。これは映画の中にも何度か出てくるセリフですが、もどかしさを表現しているのかなと思います。ユニはジュンに会いたくて小樽に行ったはずなのに、勇気が出せずに遠めにこっそりジュンを見たり、なかなか会わないんですね。そのもどかしさと、雪かきをしてもその上に降ってくる雪と、重なりました。


〇やっぱりユニ役のキム・ヒエさんはさすがだなあと思うのは、旅の前に韓国にいた時の顔を見ると、本当に疲れた顔で生きていても何も楽しくないという顔だったのが、小樽に来ると目をうるませて、表情だけでこれまで抱えてきた思いを物語るんですね。

この映画の魅力は、さりげなさ。ちょっと日本映画っぽいですけど。それぞれ、登場人物がそれぞれを大事に思うがゆえに慎重で、気付いても言わなかったり、そっと、優しいところ。例えば、ユニとジュンが再会するきっかけを作ったのは、実はジュンと一緒に住んでいるジュンのおばなんですけど、ジュンがユニに宛てて書いた手紙で、出すのをためらっていた、あるいは出すつもりはないけど書いていた手紙をおばが見つけて、ポストに入れる。会いたいんだろうな、伝えてあげたいな、というおばの思いで、二人が再会に至るんですね。


〇最後は韓国に戻ってからのシーン、旅行に出るためにユニは失業していて、新しい職を探すんですけど、旅に出る前とは違って、人生に積極的になっている姿が見られて、すごく幸せな余韻が残りました。「ユニへ」は11月に大阪の韓国文化院が主催する大阪韓国映画祭で上映予定だそうですので、お近くの方はぜひご覧になってください。

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