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文化

映画「我が心のオルガン」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2021-01-08

玄海灘に立つ虹


〇本日ご紹介するのは、映画「我が心のオルガン」です。2021年新年最初の回なので、ほわっとやさしい映画にしたいなと思って選びました。主演はイ・ビョンホン、チョン・ドヨンで今ではベテラン俳優ですが、韓国では1999年公開の映画なので当時のまだ初々しいイ・ビョンホン、チョン・ドヨンが見られます。ちょうど今月日本でイ・ビョンホン主演「KCIA南山の部長たち」が公開されるんですよね。昨年韓国で公開されたタイミングでこのコーナーで紹介しましたが、結局昨年韓国で最も観客数の多かった映画が「南山の部長たち」でした。


〇「我が心のオルガン」はタイトルにオルガンと入っていますが、オルガンはもちろん、LPレコードが出てきたり、音楽がとても印象的な映画で、ミュージカルにもなってるんですよね。私はミュージカルも見たんですが、とっても良かったので、機会があれば、ぜひミュージカルも見てほしいなと思います。


〇映画の背景となっているのは1960年代の韓国の田舎の小学校で、当時は「국민학교国民学校」だったんですね。日本もかつて戦時下で小学校を国民学校と呼んでいましたが、日本植民地下だった影響で、韓国では1990年代までこの呼び方が残りました。今は초등학교初等学校と言います。

映画のなかでチョン・ドヨン演じる主人公ホンヨンは国民学校の生徒、イ・ビョンホン演じるスハはソウルから赴任してきた担任の先生という関係でした。60年代の地方では、まだ女の子が当たり前に学校に通える状況ではなかったようで、ホンヨンは17歳で、かなり遅れて国民学校に通っているんですね。スハは教師になりたての21歳なので、先生と生徒と言ってもかなり歳は近く、ホンヨンがスハに恋心を抱きます。でも、スハは同じく国民学校の先生でイ・ミヨン演じるウニのことが気になっているんですね。


〇ホンヨンのスハを好きで好きでたまらない、落ち込んだり、嫉妬したり、喜んだりという喜怒哀楽のはっきりした表情が、60年代の田舎の雰囲気ともあいまって、懐かしい初恋の気分にさせてくれます。特にスハにつねられたのを自分に対する好意だと思い込んで、叫びながらはしゃいで喜ぶ様子、10代にしか見えない瑞々しさが目に焼き付いています。99年というと、チョン・ドヨンが映画で活躍し始めた頃なんですが、実はこの当時すでに20代半ばで、17歳のあの田舎の純粋な少女ホンヨンを演じている一方で、同じ99年公開の主演映画「ハッピーエンド」では浮気する妻を演じていて、そのキャラクターのギャップにびっくりしました。


〇改めて「我が心のオルガン」を見直すと、アナログならではの温かみがいっぱいつまった映画だなと感じました。その一つは日記で、ホンヨンは感じたことを宿題の日記に正直に書いて、担任のスハはそれを読んで、ホンヨンの自分に対する好意も知りつつ、たまにコメントを返したりするんですね。韓国はどうか分からないですが、私の小学生の頃は交換日記というのがはやっていて、私もやっていたのを思い出しました。今だと小学生でもスマホを持っていて、交換日記って何?って言われそうですよね。もう一つはLPレコードで、スハがウニに貸してあげたLPが割れてしまう、という事件があるんですが、それはスハのウニに対する恋がうまくいかない象徴にもなっているんですよね。なんでもパソコン、スマホになっている今は便利ですが、形としての思い出がなくなっているような気がして少し寂しいような気もします。


〇日本ではちょっと遅れて2006年に公開されているんですが、韓流ブームを経て、イ・ビョンホンの人気が出たのを受けて、というのもあるんでしょうね。DVDも出ているので、まだの方、ぜひご覧いただきたいなと思います。イ・ビョンホンファンのなかで、この映画が一番好き!という方もいるぐらいなので、シャイで爽やかな青年イ・ビョンホンの演技を楽しんで、20年の時を経て深みの増した「南山の部長」のイ・ビョンホンも見てほしいなと思います。

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