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文化

映画「夏時間」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2021-02-05

玄海灘に立つ虹


〇本日ご紹介するのは、映画「夏時間」。韓国では남매의 여름밤というタイトルでした。ユン・ダンビ監督は1990年生まれという若さですが、ロッテルダム国際映画祭など韓国内外でたくさん受賞しています。


〇主人公は高校生の女の子、オクジュ。10代の女の子を主人公に描いた映画としては「はちどり」が昨年日本でも上映され、話題になりましたが、「はちどり」のキム・ボラ監督も1981年生まれの女性監督で、若手女性監督の活躍が本当に目に見えて増えているなと感じます。


〇韓国の原題の남매は姉と弟、または兄と妹を意味する言葉ですが、映画には二組の남매が登場します。まずは主人公オクジュと小学生の弟のドンジュ。そして、オクジュのお父さんと、お父さんの妹です。

夏休み、お父さんとオクジュ、ドンジュはおじいちゃんの家で過ごすことになるんですが、そこにお父さんの妹もやってきて、5人暮らしが始まります。

オクジュのお母さんは?というと、離婚していて、ドンジュは会いに行ったりもするけども、オクジュは会わない。詳しい事情は説明されないけども、母に対する複雑な感情を抱えているのが分かります。

なんでお父さんの妹が来たのかと言えば、最初はおじいちゃんの体の具合が良くないからだったのが、実は夫とけんかして出てきた模様。高校生と小学生の남매は子どもながらに大人の事情と隣り合わせで生きています。


〇おじいちゃんの家が、いいんですよね。二階建ての、日光がたっぷり入ってくる造りになっていて、緑のある庭もあって、とっても絵になる。特に蚊帳が印象的でした。オクジュが蚊帳の中に入って寝るんですが、半透明にぽわっと見えるのが、自分は使ったこともないのになぜか懐かしいような気持ちになる。誰もが子どもの頃の夏に特別な思いを持ってるんじゃないかなと思いますが、それを刺激するような、ノスタルジックな光景がたくさん出てくる映画でした。撮影の多くは仁川だったみたいで、私はけっこう仁川の映画やドラマのロケ地を取材しているので、あ、ここあそこだ、みたいな場所もけっこう出てきたんですけど、仁川ってノスタルジックな雰囲気の場所が多いんですよね。


〇そういう絵的には優しい雰囲気の中で、ドキュメンタリーを見ているかのような現実的な人間臭い出来事も起きる。仕事がうまくいかなくてお金に困っているお父さん、おじいちゃんに老人ホームに入ってもらって、家を売りたいお父さんの妹、二重瞼に整形したくてお金がほしいオクジュ、お母さんに会いたいドンジュ。ドンジュは演技なのか天然なのか、表情や身ぶりがすごくかわいい。特にダンスが最高で、家族に、そして観客に笑いを提供してくれる存在でした。


〇オクジュはお母さんに会うのを拒むんだけども、夢にはお母さんが出てくる。それだけ会いたい気持ちもあるということですよね。ドンジュみたいに無邪気にお母さんに会いたい、とも言えない、その葛藤が映画の全体に漂っていた気がします。それでドンジュにきつく当たってしまう。そんなオクジュとドンジュのけんかに、声を荒げることなく優しく仲裁に入るおじいちゃんもまた素敵でした。


〇ある夏の平凡と言えば平凡な家族の物語。なぜか懐かしい気分にさせられるそんな「夏時間」は、日本では今月27日に公開予定ですので、ぜひご覧いただければと思います。

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