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文化

「スンデ実録」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2021-03-19

玄海灘に立つ虹


〇今日ご紹介する本は、「スンデ実録」です。小説でもエッセイでもなく、スンデについてのあらゆることが書かれた本で、著者は「スンデ実録」というお店を経営しているユク・キョンヒさんという女性です。スンデは韓国ではよく食べるんですが、知らないという日本の方もいると思うので説明すると、腸詰めですね。豚の腸に豚の血液、もち米、野菜などを入れて蒸したものなんですが、スンデも種類がいろいろで、腸の中に入れるものは様々です。


〇最近は日本でも韓国料理が人気で、韓国料理の店は増えましたけども、スンデはなかなか日本で食べられないんですよね。韓国を離れている間、食べたくて仕方なかったメニューの一つがスンデでした。今回は仁川空港に着いた到着日、友達に空港まで車で迎えに来てもらったんですが、差し入れを買ってきてくれるというので、スンデを頼んで初日から久々のスンデを味わいました。よく屋台などでトッポッキと一緒に売っている、中にタンミョン、韓国の春雨の入った最もポピュラーなスンデです。

そのくらいスンデが好きなので、この本は友達がプレゼントしてくれました。大学路にある「スンデ実録」のお店にも行って、他ではあまり見ないスンデステーキを食べたこともあります。


〇本の内容ですが、スンデの歴史や韓国各地の様々なスンデ、世界のスンデについて書かれています。特に韓国各地の様々なスンデについては、具体的な店の名前も出ているので、スンデガイドブックとして、お店を回る参考にもなります。

まずはスンデの歴史ですが、世界的に見るとものすごく歴史が古くて、7000年前からあったらしい、文学作品を根拠にしても少なくとも2500年前からということなので紀元前からスンデのようなものを食べていたんですね。スンデとは書いていますが、いわゆる韓国のスンデというよりは腸詰めのことを指してると思います。

では韓国では?というと、これは明確ではないようで、高麗時代には仏教の影響で一般的にはお肉をあまり食べず、王や身分の高い人たちは食べたけども、スンデを食べたのかはよく分からないそうです。スンデらしいものが記録に登場するのは朝鮮時代の1670年ごろのようです。


〇韓国各地のスンデの中には私も行ったことがあるお店がいくつか出てきたんですが、一つは、仁川の원조이화찹쌀순대(元祖イファもち米スンデ)。地元の人のおすすめで行ったお店だったんですが、ここのスンデクッパがおいしかった! 私はスンデも好きですが、スンデクッパのスープも好きです。ここのはスッキリした透明っぽいスープで、スンデの中にはもち米の他に豆腐やもやしなども入っていて食べ応えのあるスンデでした。1968年にオープンした老舗で、朝鮮戦争の時に北から逃れて来た人たちのレシピを参考にしているそうです。北朝鮮でもスンデを食べるんですね。


〇北朝鮮のスンデといえば、まだ行ったことはないんですが、「スンデ実録」を読んで、今度行ってみたいと思っているのが、江原道ソクチョのアバイ村。アバイはアボジ(お父さん)やハラボジ(おじいさん)を意味するハムギョン道という北朝鮮の地方の方言で、アバイ村は朝鮮戦争の時に北から逃れて来た人たちが集まって住み始めた場所です。ここのオジンオスンデ、イカスンデが有名で、豚の腸ではなくイカに牛肉、豆腐、もやし、青唐辛子などを入れて蒸したものなんですが、近く江原道に行く予定があるので、食べて来たいと思います。


〇世界のスンデ(腸詰め)も、著者が実際に旅して回りながら食べて書いているので、紀行文としても楽しめるんですが、何よりもこんなに世界にいろんな腸詰めがあったのか、というのに驚きます。スペイン、フランス、英国などヨーロッパの国々が多く、写真を見ると韓国のスンデとそっくりのものもあったりして、不思議な気がしますが、逆に日本ではあまり日本独自の腸詰めのようなものは聞いたことがなく、この「スンデ実録」で紹介されているのは北海道のイカ飯。そういえばオジンオスンデとちょっと似ているのかもしれないですが、お隣の国日本で腸詰めがなんで発達しなかったのかなってのは気になるところですね。

この本は日本語に翻訳はされていないと思いますが、韓国語で読めるという方の中で、特に最近は韓国ドラマをきっかけに韓国の食への関心が日本で高まっているので、韓国の代表的な食文化の一つとして「スンデ実録」をお勧めしたいと思います。

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