自己啓発本『セイノの教え』
2024-03-21
昔々、
ある村にチャドルとドゥマンという二人の青年が住んでおりました。
同い年の二人ですが、性格はまったく違います。
チャドルは礼儀正しく、やさしい性格でしたが、
ドゥマンは欲深く、意地の悪い性格でした。
山に着いたチャドルは斧を取り出しました。
「よーし、今日も頑張るぞ!」
しばらくすると、背負子は薪でいっぱいになりました。
チャドルが薪を縄でしっかりと縛った後、斧を縛り付けようとした時でした。
手が滑って、チャドルは斧を泉に落としてしまいました。
大きな音とともに白いひげを生やした山の神さまが金の斧を持って現われました。
「この斧がお前の斧か」
「私の斧は金の斧ではありません」
「ならば、この斧がお前の斧か」
「その銀の斧も私のものではありません。私の斧は鉄で作った古い斧です」
山の神さまは金の斧も銀の斧も自分のものではないと言う正直な青年、
チャドルの姿に感心しました。
「さあ、褒美としてこの金の斧と銀の斧をあげよう」
チャドルが山の神さまに出会い、褒美として金の斧と銀の斧をもらったという
お話はあっという間に広がりました。
欲張りのドゥマンはチャドルの家まで走っていきました。
チャドルから山の神さまと会った時の話を聞いたドゥマンは家に帰り、
蔵から斧を取り出して山に向かいました。
ドゥマンは何回か斧を振り上げて木を切る振りをしました。
そして、泉をめがけて力いっぱい斧を投げました。
「誰か!私の斧を探してください!私の斧!」
その時、山の神さまが現われました。
「この斧がお前の斧か」
「は、はい!その金の斧が私の斧です!あ、もう一つ、銀の斧も落としました。
それも探していただけませんか?」
「けしからん!この大嘘つきめ!」
ドゥマンの嘘を見抜いていた山の神さまがどなり付けました。
欲張りのドゥマンは金の斧と銀の斧どころか、
木こりになくてはならない鉄の斧まで失い、泣く泣く山を下りてきました。
自分の行動が恥ずかしくなったドゥマンは顔を上げることもできませんでした。
チャドルは何も言わず、そんなドゥマンの手をぎゅっと握り締めました。
2024-03-21
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