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文化

映画「アンフレームド」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2022-02-03

玄海灘に立つ虹


本日ご紹介する映画は、「UNFRAMED/アンフレームド」という短編映画集です。4本の短編なんですが、それぞれパク・ジョンミン、ソン・ソック、チェ・ヒソ、イ・ジェフンという人気俳優が監督を務めています。いずれも30代の勢いある俳優ですよね。韓国の動画配信サービス「ウォッチャ」のオリジナルなんですが、韓国では昨年の釜山国際映画祭で先行上映された後、ウォッチャで配信され、ウォッチャは日本にも進出していて、日本でも見られます。


4本の中で個人的には、ソン・ソック監督の『再放送』が特に好きなんですが、甥とおばのロードムービーです。おばの孫の結婚式に2人で一緒に行く道中の出来事が描かれています。繊細な心の動き、他人には分からないような2人の間の心遣いが見えてきて、じーんときました。

結婚するおばの孫というのは娘の息子なんですが、娘はがんで亡くなっているんですね。だから、おばにとっては、孫が結婚するめでたいだけの席ではなく、娘の不在と向き合わないといけないという、心理的な負担になっています。行きたいような行きたくないような複雑な気持ちです。一方、甥のほうは無名俳優で、結婚式場へ向かう道中で急きょ撮影現場に来て出演してほしいという依頼の電話を受け、現場に向かおうとします。だけども思い直して、複雑な気持ちを抱えているおばと一緒に結婚式場に向かう方を選びます。大まかなストーリーを言うとこれだけの話ではあるんですが、演出うまいなあとうなるほど、さりげない言動、ヤクルトとか傘とか小道具の使い方も印象的でした。釜山映画祭のトークでソン・ソック監督は「初監督作は心温まる映画にしたかった」と話していたので、2本目、3本目も作るのかなと、期待しています。


他の3作品もそれぞれ良かったんですが、時間の関係上簡単に紹介したいと思います。まずパク・ジョンミン監督の『学級委員長選挙』はタイトルの通り、小学生の学級委員長選挙を描いた短編ですが、主人公はいじめられっ子で、ガキ大将みたいな男子生徒に協力を求められ、不正選挙に協力するという内容です。もうすぐ大統領選ですが、大人が醜い足の引っ張り合いをしているのは、子どもにも悪影響を与えるだろうなと改めて思いました。

チェ・ヒソ監督の『バンディ-蛍の娘』は、バンディという名前の娘とシングルマザーの話で、シングルマザー役はチェ・ヒソが自ら演じています。バンディ役はパク・ソイという子役なんですが、『ただ悪より救いたまえ』でもチェ・ヒソと親子を演じてるんですね。この共演をきっかけに、今回の作品が実現したそうです。2人でソウルの裏山で蛍を探します。

イ・ジェフン監督の『ブルーハピネス』は、チョン・ヘインが主演し、株式投資の沼にはまる今どきの若者を演じました。主人公は彼女と同棲しているんですが、彼女は会社に勤めていて、自分は就職活動がうまくいかず、焦っているんですね。株価と共に変わるチョン・ヘインの表情が、良かったです。このコーナーでも何度か話題になってますが、とにかくコロナ禍で株式投資がはやってます。日本でもある程度は聞きますが、韓国は本当に不動産と株の話題が多くて私はほとんどついていけません(笑)。 


この4作品も今の世相を反映したものと言えますが、映画祭で見る短編映画もその傾向があります。外国人労働者の差別待遇や、就活生に対するセクハラなど、社会問題を鋭く指摘する作品も多く見られます。有名な監督、俳優も最初は短編映画からスタートしていることが多いので、改めてそういった作品を見直すのもおもしろいです。『82年生まれ、キム・ジヨン』のキム・ドヨン監督の『自由演技』や、俳優のピョン・ヨハンが注目を集めるきっかけとなった『土曜勤務』など、実は短編の中にも名作はたくさんあるんですね。

劇場では2時間という枠に合わない映画がかかりにくいという事情があるんですが、動画配信サービスは時間はあまり関係ないので、これまで日本で見られなかった短編もどんどん配信されるといいなと思います。

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