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文化

映画『声/姿なき犯罪者』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2022-09-01

玄海灘に立つ虹


〇本日ご紹介する映画は、『声/姿なき犯罪者』です。原題は『ボイス』で、韓国では昨年公開されたんですが、日本では来月、10月公開の予定です。監督はキム・ソン、キム・ゴク監督で、2人は兄弟で、これまでも一緒に監督を務めてきました。主演はピョン・ヨハン。一言で言って、振り込め詐欺の映画です。韓国ではボイスフィッシングと言うのですが、日本でも韓国でも被害は大きいけども、犯罪の実態はなかなかつかめない、そんな振り込め詐欺の犯罪組織を暴く映画でした。


〇ピョン・ヨハン演じる主人公のハン・ソジュンは元刑事で、今は建設現場で働いています。どうやら国会議員の息子を捕まえてしまったという理由で刑事を辞めたようです。建設現場での仕事にも慣れ、もう少しで現場監督に昇進するというので喜んでいたある日、ソジュンの妻が振り込め詐欺の電話を受けて7000万ウォンを振り込んでしまい、ショックで茫然としている状態でさらに交通事故に遭います。7000万は大きいですよね…。妻だけでなく、建設現場の所長が会社の金30億ウォンを騙し取られ、同僚みんなが給料をもらえない状態に陥ります。ソジュンは復讐のため振り込め詐欺の犯罪組織に潜入します。


〇韓国では最近、ある医師が振り込め詐欺で41億ウォンの被害に遭ったというニュースが話題になっていました。深刻な被害が後を絶たないようです。日本でも以前は「オレオレ詐欺」と言われたのがだんだん犯罪手法が複雑化して「振り込め詐欺」と言われるようになりましたが、電話を受けたことがある、あるいは身近に被害者がいるというリスナーの方も多いんではと思います。

実は私も韓国で電話を受けたことがあって、最初は出入国管理事務所、それから警察からかかってきて、本当だと思って聞いていたら、途中で銀行口座の話が出てきたところでハッとしました。「どこの警察の誰ですか」と逆に問い詰めたら切れましたけど、連係プレーのうまさにあやうく騙されるところでした。その連係プレーも含め、犯罪の裏側が詳しく描かれていて、かなり調べたんだろうなと思います。個人情報流出というニュースをよく見ますが、この映画のように犯罪に使われていると思うと、怖いですよね。


〇もう一つは、ピョン・ヨハンの映画と言ってもいいくらい、ピョン・ヨハンがずっと出続ける映画でもあるのですが、ドラマ『未生』で注目を浴びた俳優で、このコーナーでも紹介した映画『チャサンオボ』でもソル・ギョングと共に主演していましたし、今年の夏は『閑山(ハンサン)龍の出現』でパク・ヘイルと共に主演し、韓国映画界を担っていくだろう存在感を感じます。


〇振り込め詐欺の被害がなかなかなくならないのは、国際的な犯罪で手を付けにくいというのもあります。警察の動きが鈍いので、元刑事のソジュンは個人的に捜査に乗り出し、中国のコールセンターに潜り込みます。コールセンターでは同じ作業服を着た大勢のスタッフがチームを組んでサイバー捜査隊、検察、金融監督院などと役割分担をしながら振り込め詐欺の電話をかけている。それが本当に巧妙で、もちろん映画は俳優が演じてますが、実際のこの役割の人たちもかなりの演技力が求められるなと思いました。


〇私も新聞記者時代、現金を引き出す役とか、携帯電話を違法に入手した人とか、振り込め詐欺にかかわる犯人の逮捕についての警察の発表を何度か受けましたが、こうやって映画で犯罪の全体像を見ると、とかげのしっぽきりだったんだなと思いました。犯罪組織本体の摘発がなければ、いつまでも繰り返され、今後もまだまだ続くのだろうなとうんざりしつつ、どういう手法なのかというのを知ることは、騙されないうえで重要だなと思いました。啓発の映画ではなくエンタメとして楽しめる映画ですが、そういう意味でも見る価値があると思いました。迫力あるアクションシーンもあるので、ぜひ映画館で見てほしいなと思います。


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