メニューへ 本文へ
Go Top

文化

2022年の韓国の本、振り返り

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2022-12-22

玄海灘に立つ虹


〇前回2022年の映画について振り返ったので、今回は2022年の本について振り返ってみたいと思います。まず小説ですが、よく売れたのは、キム・ホヨンの『不便なコンビニ(불편한 편의점)』。2も出て、シリーズ1、2合わせて100万部売れたミリオンセラーです。私はまだ読めていないのですが、心温まる、優しい内容のようで、「ヒーリング小説」と呼ばれています。2020年代、これで100万部を超えたのは、いずれもこのコーナーで紹介した『アーモンド』、『夢を売る百貨店』に続き3作目ということです。3作とも10代にもよく読まれているという共通点があって、幅広い世代に支持されているということですね。



〇キム・フンの『ハルビン』も何週間か連続で1位を記録していました。キム・フンの『黒山』はこのコーナーでも紹介したことがありますが、歴史小説で知られる人気作家です。『ハルビン』は、伊藤博文を暗殺した安重根の話なんですが、暗殺場所がハルビンだったんですね。安重根は韓国では英雄で、誰もが知っている話なので、どのように小説として描いたのか、気になります。

『お父さんの解放日誌』という小説も上位に入っていて、読んでみたいと思っているんですが、タイトルは今年話題になったドラマ『私の解放日誌』からとったんだろうと思います。



〇小説以外では、『李御寧(イ・オリョン)の最後の授業(이어령의 마지막 수업)』という本も注目を集めました。イ・オリョン先生は今年2月に亡くなり、このコーナーでも代表作の『「縮み」志向の日本人』を紹介しましたが、先生の亡くなる直前に語った内容をまとめた本が、よく読まれました。私も買って読んでいますが、主に「死生観」にまつわる内容です。コロナ禍で病気や死について考えることが増えましたが、どう向き合うのか、イ・オリョン先生に学ぶことはたくさんありそうです。



〇今年目立った傾向としては、映画やドラマのシナリオがよく売れているそうで、最近書店に行った時もベストセラーのコーナーに映画『別れる決心』のシナリオが並んでいました。『別れる決心』は印象的なセリフが多かったのと、一回見ただけでは理解の難しい部分もあって、ゆっくり読みながら内容を確かめたいような気がします。ドラマのシナリオでは『その年、私たちは』のシナリオが売れたみたいで、私はこのドラマはどちらかというと音楽にはまって、何度もユーチューブで聞いていますが、いずれにしても作品の余韻に浸りたいということなんでしょうね。



〇外国書籍では、このコーナーでも紹介したミン・ジン・リーの『パチンコ』、在米コリアンが書いたアメリカの小説ですが、武田さんも出演したAppleTVのドラマ『パチンコ』が今年配信されたのもあり、再び脚光を浴びました。日本の小説では、太宰治の『人間失格』がなぜか売れていて、これは日本向けには記事を書いたのですが、特に若い世代によく読まれています。『人間失格』というドラマが昨年韓国で放送されたのですが、内容は小説とほぼ関係ないのと、視聴率があまり高くなかったので、ドラマの影響とも考えにくく、出版社でも「なぜ売れているのかはミステリー」と言うほど、謎の売れ方です。若者にインタビューした結果、コロナ禍での人間関係の難しさなどが影響しているのかなと感じました。


〇2022年もこの番組のおかげもあって、様々な韓国の本に出合って楽しく学ばせていただきました。振り返りのためのリサーチをしていたら読みたい本のリストがまたいっぱい増えてしまいました。年末年始、日本に戻るので、日本の書店でどんな韓国の本が翻訳されているのかチェックするのも楽しみです。私の出演は今年は本日が最後なので、皆さん、今年もお聴きいただきありがとうございました! ちょっと早いですが、良いお年をお迎えください。


おすすめのコンテンツ

Close

当サイトは、より良いサービスを提供するためにクッキー(cookie)やその他の技術を使用しています。当サイトの使用を継続した場合、利用者はこのポリシーに同意したものとみなします。 詳しく見る >