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文化

「シムチョンの歌の中から、もらい乳」ほか

#国楽の世界へ l 2023-05-02

国楽の世界へ

「シムチョンの歌の中から、もらい乳」ほか

韓国の伝統芸能パンソリ、「シムチョンの歌」は、目が不自由な父のために、親孝行の娘シムチョンが自分を犠牲にする物語りです。シムチョンは海のいけにえとして売られましたが、紆余曲折の末、結局は皇后になります。そして、シムチョンのお父さんはもちろん、世の中の全ての目が不自由な方々が、目が見えるようになるという結末です。これは、物語りだから可能なことで、現実では不可能なことでしょう。最近の人々は、シムチョンの親孝行な気持ちに感動するよりは、理解できないと思うことが多いようです。お父さんのためだとしても、自分の命を犠牲にするのは、やり過ぎではないかと思うのです。人の心と行いは、いつも合理的に動くものではありません。特に、家族の愛は、計算によるものではないはずです。ただ、相手のためにどんなことでもしてあげたいという気持ちなのでしょう。今日の最初は、目が不自由な父が、生まれたばかりのシムチョンを抱いて、村の女性らにもらい乳をし、安心して喜んでいる場面です。


シムチョンが生まれてから数日後に、シムチョンの母が亡くなると、目が不自由な父は一人で赤ちゃんを育てることになりました。赤ちゃんがいなかったときも全てを妻に頼っていたのですが、妻が赤ちゃんを残して亡くなると、どんなに絶望的だったでしょうか。現実は、お腹が空いた赤ちゃんが休まず泣いています。粉ミルクもなかった時代なので、仕方なく、村の女性らが集まっている場所を訪ね、もらい乳をするしかなかったのです。村の女性らのおかげでお腹がいっぱいになったシムチョンが泣き止んで落ち着くと、父は赤ちゃんに悪いという気持ちと同時に、なんとしてでも生きてみようという決心をしたはずです。そのようにして育てられたシムチョンが、後日皇后になったときも、お父さんのことを考えると、一時も安心することができません。故郷の方へ飛んでいくカリに対し、お父さんへ手紙を伝えて欲しいと言い、涙を流します。今度は、この場面を歌う曲です。


皇后になったシムチョンは、全国の目が不自由な方々のための宴会を開くことしました。シムチョンの父もその宴会に参加し、シムチョンが「お父さん」と叫ぶ声を聞いて瞬きをしていたところ、急に目が見えるようになりました。亡くなったと思っていた娘に再開したところ、皇后になっていて、自分も目が見えるようになったので、こんなにめでたいことがありません。父は杖を投げ捨てて、踊り歌いながら、嬉しい気持ちを表現しました。仮に、シムチョンが皇后ではなく、自分の目が治らなかったとしても、シムチョンに再開できただけでも、父は踊りながら喜んだはずです。これが親の気持ちだと思います。

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