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文化

映画『ドリーム』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2023-05-04

玄海灘に立つ虹


〇本日ご紹介する映画は、イ・ビョンホン監督の『ドリーム』です。パク・ソジュン、IU主演という、それこそ夢のようなキャスティングの注目作で、韓国では4月26日に公開されました。イ・ビョンホン監督は俳優のイ・ビョンホンとはまったく別人ですが、監督は監督で有名で、前作の『エクストリーム・ジョブ』で観客数1600万人を超えるメガヒットを飛ばしました。コメディーを得意とする監督で、今回はホームレスの韓国代表サッカーチームを描きました。まず、ホームレス・ワールドカップというのがある、というのを私はこの映画で初めて知ったんですけど、その名の通り、ホームレスの方々が選手として参加するサッカーの世界大会です。韓国は2010年のブラジル大会に初めて出場したんですが、その2010年初出場の韓国代表チームをモチーフにして作られたのが、今回の『ドリーム』という映画です。


〇そのホームレスの韓国代表サッカーチームを監督として率いる元サッカー選手のホンデをパク・ソジュンが演じました。かなり練習したんだろうと思いますが、サッカーのシーンでは本当に選手に見えるぐらいうまくて、さすがだなと見入ってしまいました。以前ドラマでテコンドー選手を演じていたこともあって、基本的に身体能力が高いんですね。

IUが演じたのは、プロデューサーのソミン。IUはドラマ『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』や映画『ベイビー・ブローカー』でどちらかというと口数の少ない役の印象が強いかもしれないですが、今回の『ドリーム』ではよくしゃべる元気なキャラクターでした。

ソミンはホームレスの韓国代表サッカーチームのテレビドキュメンタリーを撮るんですが、映画の中でドキュメンタリーの制作過程が出てきます。イ・ビョンホン監督が脚本・演出を務めた『恋愛体質』というドラマと同じ構造で、このドラマは脚本家と演出家が主人公で、ドラマを作る過程が描かれたドラマでした。

今回はドキュメンタリーの裏側を見せる、というもので、ドキュメンタリーだけどもソミンの演出が入ったりして、あるがまま撮っているわけではない、というのがおもしろいところでした。


〇韓国代表チームのメンバーはそれぞれ、いろんな事情を抱えてホームレスになったわけですが、個性的で一筋縄ではいかないようなキャラクターたちです。それをソミンはプロデューサーとしてドキュメンタリーに仕立てます。工事現場で働いていてけがをして職を失ったり、事業を拡大するなかで罪を犯して刑務所に入ったり、様々な経緯でホームレスになった人たちにも、家族や恋人、会いたい人がいて、サッカーで活躍する姿を見せたいという思いがあります。

一方、ホンデはトラブルを起こしてサッカー選手を辞めたけども、借金を負って逃げ回っている母のためにもお金が必要な状況で、嫌々、監督を引き受けます。最初はやる気のないホンデですが、だんだん選手たちのそれぞれの事情に共感し、本気になっていく、というストーリーでした。

ちなみに選手たちは相当サッカーがへたくそで、ゴールキーパーがいない状態でもゴールが決められないという弱小チームが、世界の舞台でどういう活躍を見せるのかというのが見どころでした。

イ・ビョンホン監督の作品のキャラクターはちょっとダメな人、情けないけど、人間的で応援したくなるような人が多いんですが、今回の『ドリーム』もまさにそうで、映画とは分かっていながら、いつの間にか必死で応援していました。

一度人生に失敗しても努力すれば立ち直れるという、そういう温かいメッセージが、『ドリーム』というタイトルに込められていたのかなと思います。


〇パク・ソジュンといえば日本でもドラマ『梨泰院クラス』のヒットでおそらく1、2位を争うくらい人気の俳優、そしてIUも『ベイビー・ブローカー』で日本での認知度が一気に上がり、『ドリーム』は間違いなく日本で公開されるだろうと思います。

映画の冒頭、ホンデが現役選手としてサッカーをしている場面で、カン・ハヌルと競うように走るのを見ながら、どこかで見たことあるような、と思ったら、映画『ミッドナイト・ランナー』主演の2人なんですよね。イ・ビョンホン監督らしい、くすっと笑わせるような要素が散りばめられているので、それも楽しんで見てもらえたらなと思います。


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